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2000.6.14
 
 


自動車用燃料電池産業のインフラ…

 ダイムラーが1997年に燃料電池駆動自動車を2004年に量産化するとの刺激的な発表を行って以来、燃料電池の開発競争は熾烈である。2000年初頭、この動きが加速した。

 Hydrogen & Fuel Cell Letterによれば、Ballardが第1世代燃料電池PEFCの基本設計を完成した模様だ。水素原料なら80kW発電が可能な「Mark 900」である。このモジュールは、センサーやエレクトロニクスデバイスが統合されていて、様々な自動車に搭載できる。しかも、連続自動生産ラインの技術も開発済みという。設備投資は3〜4億ドルとのこと。(北米で大量生産計画を立案中)
 といっても、ダイムラー・クライスラーが発表した燃料電池搭載バス価格は120万ドルで、極めて高額だったから、「Mark 900」によって急激にコスト低下が実現できるとは思えない。
 GMも2000年1月に開催されたDetroit Auto Showで75kW発電の水素駆動車を発表した。燃料の水素は水素化物が詰められたタンクから放出される仕組みだ。詳細は不明だが、次々と新技術が登場している。(但し、GMはガソリン改質型に注力すると発表している。)
 いよいよ燃料電池車開発の動きが本格化しているといえよう。こうなると、標準化の問題が急速に浮上する。

 毎日新聞(99年12月16日)の報道によれば、資源エネルギー庁は、燃料電池開発に不可欠な統一基準を策定するために、「燃料電池実用化戦略研究会」を発足させた。標準化策定で、市場での主導権確保を意図したものとされる。東京新聞(2000年4月19日)によると、自動車メーカーから走行データを集め、インフラ仕様を2002年度までに決定するとのこと。
 水素の供給源や貯蔵方法の統一基準は政府主導で決めることになりそうだ。今のところ、燃料源(ガソリン、メタノール、天然ガス)や貯蔵方法、供給技術のどれをとっても標準がない。燃料スタンド構想無きまま走ってきた研究も、ようやく総合的な仕組み作りの議論が必要な段階に達したということだ。
 しかし、ガソリン系とガス系では事業も流通も全く異なる。供給インフラ整備をどうするかは、コスト構造にかかわる大問題だ。大きな産業になると見れば、皆が自産業にメリットある産業構造創出を主張するだろう。場合によっては、本格的な仕組み構築の前にとりあえず「つなぎ」規格をつくろうとの提案もでてこよう。従って、簡単に決着がつくとは思えない。しかも、技術は日進月歩だ。

 このような状況では、玉虫色で中途半端な規格を策定しかねまい。

 理屈では、標準化によりインフラ整備を進めれば、燃料電池車普及にプラスに働く筈だが、そうなる保証はない。技術進歩が著しい場合、判断した時点では最良の技術に見えても、すぐ後で覆される可能性は高い。誤った判断と気付いても、インフラを決定した後では変更は難しい。従って、いつ判断すべきかは、極めて重要な意思決定といえる。「2002年度」でよいのだろうか。
 といっても、自由放任によるデファクト化も難しいかもしれない。革新的技術を活かせるような規格策定活動に期待するしかなさそうだ。

(注) 「燃料電池実用化戦略研究会」は委員長が茅陽一教授。他のメンバーは大学関係・新聞9名、自動車(トヨタ、本田、日産、日本自動車研究所)、電機・電子(東芝、松下、三洋、電総研)、化学(旭硝子)、資源・ガス(東京ガス、大阪ガス、日石三菱、全国石油商業組合連合会、日本LPG協会、新エネルギー財団、新エネルギー・産業技術総合開発機構、石炭利用総合センター)


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