↑ トップ頁へ

2003.11.8
 
 


電子書籍規格の戦い (4:シグマブックの挑戦)…

 「XMDF」に弱点があることを指摘した。
  → 3:XMDFの踏ん張り

 これを衝いたのが、2003年9月に発足した「電子書籍ビジネスコンソーシアム」といえそうだ。
 メンバー66社が参加しているが、デバイスメーカーは、松下電器産業、東芝、セイコーエプソン、ナノックス(日本板硝子傘下の液晶パネル事業会社)だけである。
 (http://www.ebookjapan.org/search/members.aspx)

 名称からの想像とは異なり、電子ブック、電子辞書、PDA、パソコンといった広い分野のハードメーカーが加わっていない。もちろん、アドビは不参加であるし、シャープやソニーの名前も無い。
 当然である。新規格の旗揚げ部隊なのだ。

 新規格とは、「シグマブック(ΣBook)」である。

 これは、松下電器産業のSDカードを使う電子書籍閲覧用端末の名称でもある。2003年中に3万円台で販売すると発表した製品だ。
 (http://matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn030422-5/jn030422-5.html)
 この規格の真髄は、フォントレスにある。文字データでなく、イメージデータにした点である。(ハドソンの圧縮技術を用いたと思われる。)
 従って、すぐにグローバルに使えることになる。コンソーシアムメンバーに中国/韓国市場を狙う企業が参加しており、電子書籍の海外普及が視野にあることもわかる。
 しかし、ウリは、本と寸分たがわぬレイアウトの実現だろう。しかも、印刷物の解像度とほぼ同じである。出版業界のプロには受ける仕様だ。
 その上で、著作権保護の仕組みを東芝・松下連合のSDカードで構築した。ダウンロードも簡単になる。(おそらく、デバイスにメモリを搭載していない。当然、書き換え速度が犠牲になる。漫画のペラ読みする読者は耐えられないかもしれない。)

 この構造を持ち込むこめば、パソコン標準アドビや、PDAデバイス用規格との標準争いから逃れることができる。デバイスメーカーが力を発揮できる専門領域で勝負をかけるつもりなのだ。

 このコンソーシアムでは、今までの電子書籍の規格の一翼を担ってきたeBOOKイニシアティブジャパンが要石の役割を果たしている点も、注目点といえる。
 (http://www.ebookjapan.co.jp/)
 eBOOKは「EBI.J」規格の元締め企業である。ソフトによる認証の仕組みを作り上げ、ウインドウズ向けの電子書籍サイト10DaysBookで成功している。このサイトはマンガの取り揃え数が凄いので有名だ。イメージ画像のシグマブックの特性にあうから、力が入ることになる。
 10DaysBookはすべてのコンテンツをシグマブックにダウンロードする体制を構築するつもりのようだ。

 理屈では、チャンスはあるが、ドット・コム企業型の先走りで終わるかもしれない。製品力がコンセプトに追いついていない感じがする。
 シグマブックのプロトタイプ仕様を見ると、常時使用しても電池は3〜6ヶ月もつ。素晴らしい性能に見えるが、デイスプレー表示は反射光で読むことになる。この技術はまだこなれていない筈だ。従って、場所によっては見ずらくなる可能性が高い。
 又、本と同じように見開きにしても、本とは違い綴じ代部分が広すぎる。読者に違和感が生まれるのは間違いない。
 (http://www.sigmabook.jp/)

 もっとも、関係者すべてにメリットが生まれる仕組みができるなら、速いスピードで立ちあがる可能性もある。
 といっても、簡単ではない。電子書籍ビジネスは、上流から下流まで、様々なタイプの企業が絡んで複雑になり易いからだ。
 理屈では素晴らしくても、コンテンツ管理、オーサリング(配信データ製作)、ビューワの関係者の足並みが揃わないと破綻しかねない。課金と販売方法の適合も簡単ではない。ここが不調なら、事業そのものが成り立たなくなる。どちらに転ぶかわからないのだ。
 従って、このコンソーシアムを通じて、シグマブック一人勝ちのビジネス環境をつくれるかが勝負といえよう。
 例えば、オーサリングツールが安価で使い易いなら、小規模の継続的出版を考えているコミュニティが使い始める可能性がある。しかし、それでビジネスが成り立つとは思えない。


 デファクトスタンダードの目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com