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2003.11.16
 
 


電子書籍規格の戦い (5:T-Timeの苦闘)…

 日本の電子書籍の規格についてさっと眺めてきた。
  → 1:期待感の高まり
  → 2:汎アドビと反アドビ
  → 3:XMDFの踏ん張り
  → 4:シグマブックの挑戦

 要約すると、技術は実用レベルに達したが、出版者が及び腰、といったところだらう。

 これは、日本の特徴ということではないと思う。おそらく、米国でも市場開拓は難しい。日本以上かもしれない。
 著作権ビジネス分野の人達にとって、コピーの危険性が高い電子化は嫌われるからだ。著作権者と組むことでしか生きていけない出版業者が、電子化に一生懸命になるとは考えにくいのである。

 経緯を見ればわかる。

 書籍をCD-ROM化して有名になったのは、新潮社の「新潮文庫の100冊」だろう。1995年のことである。はっきり言えば、古い名作である。
 古いから、ほとんど著作権が消えたか、その間際のものだと思う。これなら、安心して電子化できる。
著作権が切れれば、無料で読めるサイトに電子ファイルが登場する。これでは、出版社から電子書籍を購入する意味などあるまい。
  (http://www.aozora.gr.jp/siryo1.html)

 新潮社のオンライン出版を見ると、そのビジネスの特徴がさらにはっきりとする。新潮オンラインブックスは「書店では入手困難な作品の中から、名作・話題作を選りすぐってお届けする」のだ。
 他の出版社もほぼ同じ姿勢と思う。

 そして、なにより出版社の姿勢が現われるのが、電子書籍の価格である。紙と電子ファイルの価格は未だにたいして変わらない。原料資材ゼロで在庫投資不要でインターネット配送なのに、その割に価格は高い。普通なら、立ち上げるために将来価格を予想して、魅力的な安価な価格政策をとるのだが、そのような積極策は避けているのだ。

 これでわかるように、現時点では、出版社にとって、電子書籍は「非主流商品」の位置付けなのである。

 この位置付けなら、パソコン好きが好みそうな規格「T-Time(ドットブック形式)」にメリットがでてくる。
  (http://www.voyager.co.jp/ttz/index.html)

 実際、新潮オンラインブックスは「T-Time」だし、電子書籍化運動を続けている「e−NOVELS」もPDFファイルに加え、T-Timeを2003年2月から採用している。
  (http://www.so-net.ne.jp/e-novels/index.htm)

 しかし、T-Time化の流れは、出版社にとっては鬼門である。
 個人出版がし易い規格なので、下手をすれば出版社とばしになりかねないからだ。
 従って、メジャーな著者がT-Timeベースの電子書籍を発刊しない限り、主流にはなりにくいのだ。


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