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2003.11.18
 
 


電子書籍規格の戦い (8:わからぬ方針)…

 米Barnes&Nobleは、2003年9月9日、電子書籍の販売を打ち切ると表明した。予想に反して事業は不振続きだった訳だ。

 Microsoft(「eReader」)、Adobe/Glassbooks(「PDF」)の当初の目論みは外れたが、両者ともに電子書籍の橋頭堡は確保したといえる。Microsoftは辞書と百科事典分野の大出版社になったし(Microsoft Book Shelf/Microsoft Encarta)、Adobeも電子版組み規格の標準の地位を獲得したからである。

 一方、日本では、巨大印刷会社やエレクトロニクス企業が動いたにもかかわらず、未だに、標準規格の流れをつくりきれていない。
 1998年に米国政府が主導して立ち上げた「Open eBook」に対抗し、日本でも、同年、電子書籍コンソーシアムを立ち上げたのだが、それ以来状況は変わっていないと言ってよいだろう。

 電子書籍コンソーシアムは、標準規格・著作権保護の仕組み・流通体系を検討する団体とのふれこみだった。しかし、画像データの通信衛星配信するサービスのための組織と揶揄する人も多かった。実証実験の名目で、100億円規模の補助金を獲得するために集まっただけと語る人もいた。このような状態だったのだから、たいした成果があがる筈がない。
 日本のコンソーシアムは、同床異夢状態なのかもしれない。
 外部から見る限り、電子書籍が狙っている市場も判然としない。・・・例えば、公的図書館を電子化させて、出版社は図書館からまとめて収入を得る仕組みを目論んでいる企業もありそうだ。

 米国の「Open eBook」構想とは好対照である。
 こちらは、最初から、Microsoft + Adobeによる標準化を考えて動いた。両者の規格で統一し、機器作りのベンチャーを呼び込むことで、一気に市場を立ち上げようと考えたのである。米国主導で、電子書籍読取機器産業を立ち上げようとの試みとも言える。(端末例:Rocket eBook、EveryBook、SoftBook、等)

 結局、機器市場も、電子書籍市場も立ちあがらなかったのだが、この努力は無駄ではない。
 すでに述べたように、MicrosoftとAdobeはそれなりの地位を確保したし、インターナショナルな標準化団体Open eBook Forum(OeB)を作り上げることに成功したからだ。これだけでも、目的は十分達成したといえよう。
 (http://www.openebook.org/)

 日本国内の規格の戦いは、単純なシェア争いに映る。外部から見れば、どのような流れを作ろうとしているのかさっぱりわからないのである。
 この体質が続く限り、日本発の世界標準は難しいと思われる。

 規格化で一番重要なのは、根底に流れる思想である。そもそも、思想がはっきりしなければ、将来に渡って支持すべき規格か判断ができる筈がないからだ。

 すでに述べてきたように、電子書籍には沢山の規格がある。
 しかし、その思想に遡れば、3種類しかない。これが一番重要な点である。

 第1種は、独自規格である。
 典型はAdobeのPDFファイルだ。すでに「PDF」が普及しているから、さらなる独自規格が必要とは思えない。というより、PDFファイルを使うことで大きな問題を生じない限り、新規格で混乱させられるのは避けるべき、と考えるのが普通だろう。但し、PDFファイルではニーズに対応できないニッチ分野や、特定機能優先仕様の規格を登場させる意義はあるかもしれない。この路線に属すのが「T-Time」だ。

 第2種は、単純なテキスト形式や汎用の画像ファイル形式である。
 データソースは単純極まりないものにする。そして、読む方が見易いように加工すればよい、という考え方である。コンテンツ提供には特段の技術はいらない。しかし、生データをそのままでは読みづらいから、高度な閲覧ソフトを提供することになる。ソース自体は単純だから、様々な表示ソフトが登場する。
 この仕組みは、無料コンテンツ+無料閲覧ソフトの仕組みには適合しやすい。インターネット市民社会における規格に向いているといえそうだ。

 第3種は、XMLをとり入れた規格である。
 「Open eBook」が1999年に発行した「Open eBook Publishing Structure 1.0」が典型である。HTMLとXMLが併用できる規格だ。要するに、インターネット・ブラウザですぐに読める言語体系を基本にしよう、との考え方である。
 「XMDF」や「netEB」もXML志向だ。
 これらの規格の重要な点は、XMLを用いることで、ハードやソフト仕様に依存しないで、コンテンツ記述が可能になる点である。従って、理屈からいえば、この規格が望ましいといえる。
 著述内容と表示の規格を纏めるだけなら、そう難しくはない。すぐに決まりそうなものだが、これが難しい。著作権保護が絡むからである。
 この問題を上手く切り抜けない限り、標準化の道は険しいのである。


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