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2003.11.28
 
 


動画規格の戦い (1:中国政府規格の登場)…

 中国政府(MII)が国産ビデオ圧縮規格「EVD(Enhanced Versatile Disk)」を産業標準にすると発表した。DVD代替を目指すことになる。
  (http://fpeng.peopledaily.com.cn/200310/28/print20031028_127012.html)
 高官が“Chinese companies gained much experience in competing with their global counterparts.”と語っており、戦略的な動きといえよう。
  (http://news.xinhuanet.com/english/2003-11/19/content_1186620.htm)

 この規格を開発したのはE-Worldだ。1999年に、中国政府肝いりで、中国エレクトロニクス企業と共に創設した企業である。米On2 Technologiesのビデオ圧縮技術「VP5」「VP6」を使って、DVD技術への年間数百万ドルのロイヤリティを削減しようとの試みと言われている。
  (http://www.on2.com/pressreleases.php3?qs1=evd_standard_announced)

 「EVD」の技術上のウリは、DVDが採用した映像規格「MPEG-2」では格納できない高品位映画を1枚のディスクに収めることができる点だ。これで、次世代大容量ディスクは不要という訳だ。
 仕様もさることながら、インパクトが大きそうなのはライセンス料金の方である。使用料を機器だけに限定する方針と伝えられたからだ。
 これは、現行標準の「MPEG-2」と次世代規格「MPEG-4」のライセンシングポリシーに対する強烈なアピールといえよう。

 「MPEG-2」は、DVDを普及させたことで、動画の標準規格の地位を確保した。しかし、中国政府が主張するまでもなく、ライセンス料はかなり高額である。
 (中国の状況:もともと、中国はビデオテープはほとんど普及しなかった。そのかわり日欧米地区では広まらなかった「MPEG-1」のCDVideoが使われた。中国企業がDVDプレーヤーの「超」大量生産を始め、DVD時代に移行中である。中国企業は、DVDのライセンス料を支払わず、大量輸出を続けた。)

 中国政府は、次世代規格もDVD型のライセンシング方針が続くなら、産業振興は難しかろう、と見た訳だ。産業振興のためには、中国だけの規格になってもしかたあるまい、との姿勢といえよう。
 この動きが直接的影響を与えることはなさそうだが、業界の流れを変えるきっかけになるかもしれない。
 少なくとも、「MPEG-4」の威力はそがれたといえる。

 次世代規格で重要なのはインターネット配信に対応できる能力と、性能の低い機器でも使える仕組みである。高精度映像を高圧縮可能で、粗い品質にもスムースに落とせる能力が要求されている訳だ。「MPEG-4」はその点でベスト規格と称されてきた。
 (正確には、MPEG-4のモバイル用のH.263とメインのMPEG-4 Part10 H.264がある。)

 といっても、実は、「MPEG-4」が「誰でもが使う」本来の意味での標準となる保証はない。バリアは低くはないからだ。

 1つ目のバリアは、現行の動画配信が抱える問題である。今のところ、「Real Video(.ramファイル)」、「Windows Media Player(.asfファイル)」、「Apple QuickTime(.movファイル)」の並存状態である。動画圧縮ファイル作成(エンコード)→サーバからの伝送・配信(ストリーミング)→受信ファイル回復視聴(デコード)のプロセスがビジネスの仕組み上融合せざるを得ないので、コーデックの統一は簡単には進まないのである。
 音声についても、ほとんど標準化した「MP3(MPEG-1 Audio Layer 3)」に加え「Windows Media」や「Real Player」がある。
 この状態から、スムースに、すべてが「MPEG-4」対応化するのは大事である。特に、Windows OS専用の「Windows Media Player」の普及が進んでしまったから、簡単に解決することはありえない。「MPEG-4」へ100%対応すれば、Microsoft社は、サーバ向けビジネスの武器を捨てることになりかねないからだ。

 2つ目のバリアは、著作権保護の仕組みが標準化されていない点だ。データ圧縮規格だけの標準化では、利用側から見れば、事業としての実践性を欠く。しかも、「MPEG-4」では意志一致できても、こちらは統一しようとの兆しさえない。普及の阻害要因である。

 3つ目のバリアは、作品や配信に伴う使用料である。零細事業者からみて、高額な使用料だとインターネット市場で「MPEG-4」を使用した新しい取り組みが出なくなるから、極めて重要な決断である。  「MPEG-4」の業界標準規格「AVC」は、2002年時点では、極めて高額な料金になりかねない状況にあった。20社もの権利をバンドルするため、このような状態になりがちなのだ。とはいえ、2003年11月には、かなり抑えたレベルの料金体系が発表された。12分以上の作品に対しては、作品毎に0.02ドル、加入者10万人のケータイ網/インターネット配信サービスでは年間2万5000ドルの支払いだ。
 最終ユーザー1人当りの換算にすれば、課金額は僅かだが、小規模配信サービス業者が安価と考えるかは別問題である。業者にとっては、黙って徴収される口銭であることは間違いなく、愉快な筈がない。この抵抗感を突破できないと、無償配信の仕組みが入ってくる可能性も捨てきれない。
  (http://www.mpegla.com/news/n_03-11-17_avc.html)


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