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2004.10.12
 
 


家電のネットワーク化は遅れる…

 家電製品のネットワークが進むという話をする人が増えてきた。
 2004年6月、「DLNA」のネットワークの規格バージョン1 が発表され、10月5〜9日には、幕張で開催されたCEATEC でも大きく取り上げられたからである。(1)

 薔薇色の家電製品のネットワークの絵は描けるが、バージョン1 を眺めると、ネットワークの規格化がいかに難しいかがよくわかる。(2)
 いつになったら、まともな規格ができるかわからない、と言った方がよいかもしれない。
 しかし、一歩進んだことは間違いない。

 家電の通信基盤は、パソコンが切り拓いてきた仕組みに従うということだけは明確になったからだ。極めて大きな前進である。
 しかし、これだけでは、進展は難しい。

 それでは、どこに難しさがあるのか。

 状況を3つに分けて考えると、すぐにわかる。

 先ずは、ネットワークの物理的基盤の問題だ。
 有線イーサネットと無線LAN IEEE 802.11a/b/g に、IPv4 とHTTP という、パソコンでは当たり前の標準を家電にも広げることは決まった。

 ところが、家電製品への実装は簡単ではないのである。

 家庭の部屋にコードを張り巡らすことなど考えづらい。無線LAN が多用されることは間違いないから、当然の流れではある。だが、家電製品開発者にとっては、これは大事なのである。

 広帯域通信が可能な802.11a/b/g 無線モジュールが安価になったので、家電に一気に入りそうに見えるが、この規格は基本的にWindows かLinux パソコンでの話である。例えば、市場にすでに投入されている、ホームサーバと称する製品は、実質的にパソコンである。これは、家電製品ではない。
 普通の家電製品の構造はパソコンとは全く違う。そもそもOS が違う。多くの場合はリアルタイム型の組み込みOS である。ここは各社バラバラで、802.11a/b/g を簡単に導入できる状態ではない。
 家電用OS とそれが動くCPU の選択に繋がる規格はほとんど決まっていないのである。
 つまり、現時点の規格は、パソコンの家電化を追認しただけのものでしかない。
 (理論的には、個々の家電機器毎に、規格に対応しているか検討すればよい、とも言えるが、実践性を欠く。)

 パソコンに、廉価な無線LAN が一気に入ったのは、Intel の強力なCPU がサポートしたからである。CPU のデバイスドライバーあればこそなのだ。家電用の小さなCPU では、たいていの場合は処理能力不足となるだろう。従って、パソコンと違って無線モジュール側の負担が増える。廉価な標準モジュールが登場するかはわからないのである。
 と言う事は、おそらく家電産業は無線化で大きく出遅れることになろう。

 パソコンの周辺機器の無線化は黙っていても進む。こちらは、LAN のアクセスポイントとの通信ができればよいだけだ。ここで開発される安価な無線モジュールが家電に応用されるかもしれない。

 とはいえ、物理的なネットワーク規格が決まり、機器制御もUPnP に準拠することになった。
 簡単にまとめれば、パソコンの標準に合わせて家電機器を接続するとの基本思想が確立したということである。

 家電産業は、さらに、この先に大問題を抱えている。メディア規格の標準化である。

 これが、2つ目の問題だ。
 やはり、さっぱり標準が決まらないのである。

 一応、規格の体裁は整えているが、必須要件は、実用上、ほとんど意味がないレベルだ。とても、標準と呼べるようなものではない。
 静止画での要件は、JPEG だけである。ホームページに多用されるGIF、PNG や、写真で使われることが多いTIFF はオプショナルだ。
 動画に至ってはMPEG2のみ。これでは、ほとんど互換性は無い。MPEG4、WMV のサポートはなくてもかまわないのである。
 音楽はリニアPCMのみで、全く話にならない。パソコンで普通に使うMP3やWMAはオプショナルだ。AAC、AC-3、ATRAC3plus ももちろんオプショナル。

 つまり、家電製品のネットワークに関しては、互換性についてはほとんど何も決まっていないということである。

 3つ目の問題は、著作権対策技術については、ほとんど何も決まっていない点である。
 このままでは、コンテンツ共有のメリットは生かせまい。効用なきネットワークが普及するとは思えない。

 ・・・と見てくると、道が遠いことがわかる。

 もっとも、規格化で市場が拡大する分野もあろう。
 例えば、Linux ベースのテレビ用無線サーバだけは、最低限の相互接続可能になる。

 結局のところ、この分野の規格は、力で決めるしかないことがはっきりしてきたようだ。

 --- 参照 ---
(1) http://61.195.172.240/ctec4/asp/contents/view/news/webmaga_detail.asp?la=0&d_id=4872
(2) http://www.dlna.org/news/Press-Presentation-J.pdf

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