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2005.3.31
 
 

次世代光ディスクの争点を見る…

 「Blu-ray Disc[BD]」 陣営と 「HD DVD」陣営が次世代光ディスク規格でしのぎを削っているとの報道をしょっちゅう目にする。
 日本企業が先頭に立っている技術であるし、“2005 International CES”(1月, Las Vegas(1))と“CeBIT 2005”(3月, Hannover(2))が続けざまに開催されたから、報道し易いということもあるのだろう。

 確かに、両陣営は伯仲している。支持しているコンテンツ企業(3)の売上シェアはほぼ互角で、規格統一はまずあり得ない状態といえる。
 どうにかならないのか、といった発言は多かったが、ここまで来るともう無理だ。

 ここのところ特に騒がしいのは、1月のCESでWarner Home Videoが、第4四半期にHD DVDで50以上のソフトを上市すると発表したからである。(4)
 DVDソフトを一気に上市して、普及を決定付けたと言われているWarner Home Videoが同じ作戦で動くのだから、対抗陣陣営も黙って見ている訳にはいかない。熾烈な鍔迫り合いが始まった訳だ。

 一消費者の目から見れば、早くどちらの規格に統一してくれ程度の関心しか湧かないが、この問題はそれほど単純ではない。ビデオテープに於けるVHSとβの対立とは性格が違うからだ。

 VHS対βは、視聴用パッケージメディアと記録用メディアが同じだった時代の話である。DVDはそうはいかない。
 視聴用メディアはDVD-Videoに統一されたが、記録規格の方はバラバラである。日本の家庭用レコーダはRAM主流。使い方が簡単だから、当然だと思う。しかし、パソコン用は全然違う。しかも、日米で-Rと+Rに分裂している。
 規格はバラバラ状態だ。これで問題が発生しないのは、ドライブが複数の規格に対応しているからだ。利用者にはさしたる不便ではない訳だ。

 次世代光ディスクになると、こうした対応は難しそうだ。1つの光源-レンズで、複数の層に対応するのは厄介なためだ。2レンズ搭載となると大幅コストアップになろう。

 と言うことは、今の使い方で規格が両立すれば、とんでもない面倒な状態に陥る可能性が高い訳だ。

 そうなると、早晩、消費者はどちらを選択すべきか迫られることになる。
 ところが、この視点で見ると、問題はそれほど複雑ではない。

 両者の機能上の違いなど無きに等しいからだ。結局のところ、主用途は視聴用パッケージなのか、記録なのか、で選択することになってしまう。

 視聴用パッケージを重視するなら、HD DVD選ぶしかあるまい。
 現行メディアの製造装置が使えるので、ソフトライブラリーが先に揃ってくるからだ。

 この観点で見れば、Warner Home Videoの動きは当然である。どちらかといえば遅すぎた感がする。
 米国では、2004年から大画面ディスプレーの普及が急に進んだ。高精度画面が家庭に入ったのである。高精度ディスプレーを購入したら、その力が発揮できるコンテンツを求める。著作権保護の仕組み作りに時間をとられ、この声に応えないと、チャンスを失いかねない。急ぐしかない。
 つまり、ドライブが廉価なら、一気にこのメディアが普及する可能性がある訳だ。もっとも、今もってHD DVD陣営の電機メーカーが少ないから、簡単に進むとは限らないが。

 一方、BDはこのニーズにすぐに対応できない。立ち上がり初期はどうしてもメディアが高価になるからだ。廉価にするには相当な努力と投資が必要になる。メーカーが不退転の決意で望まない限り、すぐにパッケージメディアが登場することはないだろう。

 一方、記録を重視するなら、BDを選択することになろう。すでに、購入済みのユーザーもいるし、大容量メディアを欲しがるパソコンのハイエンドユーザが使い始めれば、互換性の観点から、記録ならBDということになろう。

 もともと、パソコン系の企業にはBDが体質に合う。BDには記憶容量拡大のロードマップがあるからだ。将来を考えれば、こうした発展性がある規格が魅力的に映る。
 パソコンの発展と共に過ごしてきた人達なら、ほとんどかわらない機能なら、拡張性が高い方を選ぶ。どうせ技術進歩でコストは下がる。コスト低下の大きなバリアがないなら、現時点の価格差はたいした問題ではないと考えるのだ。
 もともと、新市場を作りたい人達が多いから、インタラクティブな大型ソフトが搭載できる規格になびくのは極く自然な流れである。

 こんな状態であることは、誰でも、話をきけばわかってくる。

 そして、規格の戦いに興味を失うのである。次世代にしては、余りにつまらないからだ。

 しかも、著作権保護問題ばかりに係わり、進展のスピードが遅すぎる。ディスプレーの進歩に対応していないのだ。

 その上、低価格実現のボトルネックが解決できるのかも、はっきりしない。
 HD DVDでいえば、現行DVDのような安価な色素染料メディアが提供できるのか、廉価ドライブ+安価メディアが本当に実現できるのか気になる。
 BDは高密度視聴用パッケージを簡単に大量複製できるのだろうか。現行メディアはかなり高価なものだ。少量生産だから致し方ない面もあるが、検盤コスト負担も大きいと思う。メディアの低価格下には相当時間がかかるかもしれない。

 ・・・と考えていくと、次世代光ディスクに「約束された大市場」などないことに気付く。もたもたしていると、新しい流れが発生して、主流から外れるかもしれない。

 一般消費者にとっては、どのような規格でも、視聴や記録ができたり、新しい楽しみを提供してもらえば、それで十分である。欲しい時に、欲しいものを入手したいのだ。今の状況では、ディスクメディアはこのニーズに応えることはできないかもしれない。
 そのニーズに応える仕組みが登場すれば、上記の議論は意味を失うのだ。

 --- 参照 ---
(1) http://arena.nikkeibp.co.jp/news/20050105/110436/
(2) http://www.cebit.de/homepage_e?x=1
(3) BD: Sony Pictures, 21th Fox, MGM, Walt Disney
  HD DVD: Warner Bros. Studios, Universal Pictures, Paramount Pictures, New Line Cinema
(4) http://biz.yahoo.com/bw/050106/65823_1.html


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