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2005.6.6
 
 

IEEE802.11aで見えてくる日本の体質…

 5GHz帯無線LAN「IEEE802.11a」規格が、2005年5月16日の電波法施行規則等の一部改正で変わった。

 要するに、使用する無線帯域(チャンネル)を、従来の日本規格「J52」から欧米の規格「W52」に代え、さらに「W53」を追加するいうことである。
 当然ながら、JとWに互換性などない。

 「J52」と「W52」のチャンネル周波数がどうなっているか見れば一目瞭然である。
 「J52」: 5.17, 5.19, 5.21, 5.23GHz
 「W52」: 5.18, 5.20, 5.22, 5.24GHz
 「W53」: 5.26, 5.28, 5.30, 5.32GHz

 流石に、日本独自規格を続ける気力はなくなったようだ。

 これが政策転換を意味すればよいのだが。

 日本の通信分野は農政と同じような発想で政策が決められて来た。

 日本の農業政策では、国際競争力が省みられることはない。
 重要なのは、業界あげて、お上の方針に従うこと。そうすれば、政治的に国内産業を保護するとの暗黙の約束ができている。
 当事者にはたいした不満はない。もちろん、不運にも、時折、苦闘させられる人達もでるが、全体から見れば極く一部。大多数は、それなりに働けば、ハイレベルな生活を謳歌できる。

 同じことが、通信分野でも行われてきた。お陰で、農業のように競争力は低下一途だ。

 この分野でも、決められた方針に従って、真面目に対応すれば、食べられるようにしてきたのである。
 こんなことをしていれば、競争力はガタ落ちになると思うのだが、それでもかまわないと考える人が多数派なのだからしかたあるまい。

 「IEEE802.11a」も、これで、新規格製品ラッシュになる。同時に旧型製品への対応も必要だから、業界は大忙しとなろう。

 こんな仕事で、有能な研究者・エンジニアの頭脳を消費させるのが日本の特徴である。
 もちろん、技術屋だけで留まらない。メーカーから小売まで、国内販売業務だけに携わる人達が一生懸命売り込む。同じようなマーケティングを繰り返すのだ。ここで手を抜くと市場は萎みかねないから、投下費用も膨大になる。

 こんな大盤振る舞いをしていても利益がでるようだ。一見、競争は激しそうだが、たいしたことはないのである。
 マクロで見れば独自規格など壮大な無駄に過ぎないが、当事者にとっては見方が違う。必要な仕事は増えるし、市場規模も大きくなるから、決して悪くないのである。

 特に、勝てる自信がなく、グローバル競争を避けたい人達にとっては有難いシステムである。

 しかし、こんな仕組みを続けることができるだろうか。資金が、国境を越えて、収益源を探し回っている状況なのに、日本経済にこんな仕組みを維持できる力量があるとは思えまい。
 ・・・と考える人は少数派である

 未だに「Yahoo! BB ADSL」躍進の教訓さえ学ぼうとしないようである。

 「Yahoo! BB ADSL」が何時までもモデム無料配布キャンペーンができるのは、世界標準のモデムを使っているからである。「Yahoo! BB ADSL」は通信サービス業者の顔をしているが、実は安価なモデム販売業者でもある。
 言うまでもないが、競争相手の日本独自規格のADSLモデムはコストでとても太刀打ちできない。

 これだけでも、日本独自規格が果たしている役割がはっきりわかると思うのだが。

 独自規格のお陰で、日本メーカーは基幹部分の研究はできなくなる。技術競争は、常に末梢的な部分で行われる。こんなスキルをいくら磨いたところでグローバルな競争力が向上する訳があるまい。

 わかりきったことだが、そうなるのが嬉しい人達が主導権を握っているのだからどうにもならない。

 苦労するグローバル競争より、国内政治力を活用して高収益化する方が楽で投資効率も抜群であると考えている人達である。そして、この路線に乗る技術屋に権威者としての地位を与えるのである。

 知恵で戦える人をいかに揃えるかが国力を強める鍵だが、逆方向に向かって動かしたい人が大勢いるのである。


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