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2005.7.12
 
 

D端子規格で見えてくる日本の体質…

 ハイビジョン薄型テレビの宣伝を見ていて、ふと“朝三暮四”の四文字熟語が頭に浮かんできた。

 D端子規格の話である。

 D端子とは、コンポーネント映像信号(Y/Cb/Cr)を伝送するためのケーブルと端子のことだが、もともと3本のケーブルだったものを1本にしただけの話である。ディスプレーを頻繁に変更することなど考えづらいから、ケーブルの一本化などどうでもよい話だと思うのだが。

 「D」だから、いかにもデジタル信号用に聞こえるが、コンポーネント映像信号とはアナログである。そのうちデジタル信号に代替される代物と言ってよいだろう。
 コンポーネント型3本ケーブルをまとめたことは、家電だから妥当な感じがするかもしれないが、信号は劣化し易くなるだろう。ハイビジョンは徹底的に美しい画像を追求すると語りながら、一方では、平然と逆の動きをしていると言えよう。
 それでも、ケーブルを減らすことで安価になるなら嬉しいが、そんなことはない。日本独自規格だから、価格はたいして安くならない。

 しかし、日本人なら、便利で大いに喜ぶだろうということで始まったのだろう。

 そして、大抵は以下のように記載されている。
  ・D1端子:480i信号のみ
  ・D2端子:D1+480p信号
  ・D3端子:D2+1080i信号
  ・D4端子:D3+720p信号
  ・D5端子:D4+1080p信号

 もちろん、5種類のコネクタがある訳ではない。形状は皆同じである。
 この表示の不思議な点はD5端子まで記載している点である。
 D5端子が登場するまで存続できるコネクタだろうか。大いなる疑問である。

 と言うのは、現在のアナログ規格「D端子」は、今後、どのようにデジタル化されるのか、著作権保護はどう組み込まれるのか、さっぱり説明が無いからだ。
 示せないなら消滅するしかあるまい。
 早い話、「つなぎ」規格なのである。

 もともと、すべてが、アナログからデジタルへと転換を進めているなかで、アナログ用新コネクタを使う意義は薄い。無駄なことに貴重なエンジニアを投入すべきではなかろう。アナログ技術に固執すれば伝統産業化やニッチプレーヤー化の危険性さえあるからだ。
 ところが、そうした動きを止めるどころか、日本発標準をつくることが重要と称し、こうした無駄を称賛する勢力が存在する。こまったものだ。

 ディスプレー技術のどこで競争すべきかはっきりさせないからこんなことが続くのである。今のままなら、時流から外れてしまいかねない。

 ディスプレー規格を主導しているのは、どう見てもパソコン産業である。将来の流れがわかる規格だから、奔流化するのである。先を示そうとしないAV産業とは大違いである。

 デジタル化規格DVI(1)がリリースされたのは1999年であり、パソコン分野では、アナログのミニD-Sub15端子からの移行はほぼ合意されていると言ってよいだろう。そして、全デジタルのDVI-Dへと着々と歩を進めている。
 次に必要なのは著作権保護技術ということもはっきりしている。従って、DVIの次世代版はHDMI端子と皆が考えている。

 こんな状況で、将来の規格がどうなるか説明してくれない、アナログ「D端子」規格を信奉する気になれるだろうか。

 「つなぎ」のアナログ規格なら、D-Sub15端子を採用してもよかったのである。(2)
 アナログ「D端子」に研究開発資源を注いでどのようなリターンがあったのか考えて見るべきだろう。その研究開発資源を飛躍のタネに注ぎ込んでいたらと思うと残念至極である。

 おそらく、ハイビジョン放送対応ディスプレーは早晩、HDMI端子になるだろう。
 換言すれば、次世代DVD機器にD端子は無くなるということである。

 そして、日本の消費者は嬉々として従う訳だ。

 --- 参照 ---
(1) DVIはSiliconImage開発の, Transition Minimized Differential Signalingシリアル転送デジタルディスプレイ用インターフェイス規格.
  コネクタはMolex開発. アナログ(DVI-A), デジタル(DVI-D), 両者(DVI-A)がある.
  制定はDigital Display Working Group.
  http://www.ddwg.org/
(2) D-Sub15端子のパソコン系製品を使えば、安価に、高品質画像のテレビ視聴ができる。2005年6月末現在の秋葉原市場で見てみよう。
  17インチ[1280x1024画素]液晶ディスプレー(輝度400cd/m2, 応答速度12ms)で23,000円がある。19インチは同スペックで38,000円に数種。
  アップスキャンコンバーター(入力:RCA/S-VHS端子, 出力:ミニD-Sub15端子[1280x1024画素対応])が10,000円弱。
  これを手持ちのチューナー付きのVHS/DVD/HDデッキに繋げばよいだけ。もちろんケーブルは安価品で十分である。
  尚、ハイビジョン対応のアップスキャンコンバーターも発売されていたが、製造中止になった。市場ではほとんど見かけない。


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