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2000.8.19
 
 


メタンハイドレートの恐怖…

 「メタンハイドレート」(5オングストローム程度の空隙を持つ水の格子にメタンガスが包接されている固体)こそ、21世紀のエネルギー源だ。」という話しがあちこちで囁かれるようになった。日本も、この資源なら豊富だから期待も大きいのだろう。

 この話題が広く知られるようになったのは、93年の奥田義久氏のレビュー論文(「天然ガスハイドレートの探索と開発への展望」日本エネルギー学会誌)が発表された頃だろう。確かに、理論的には巨大なエネルギー源ということはわかる。しかし、未解明な特性にも係わらず、エネルギー源として有望と「示唆」する論旨には「夢」と同時に「不安感」も抱かざるを得ない。

 部外者がデータを眺める限り、メタンハイドレートはエネルギー源というより、人類生存を脅かす存在としての印象が強い。なにせ、地中から、そのまま採取することが極めて困難なのである。温度・圧力の変化であっけなく崩壊する。しかも、有機溶剤が絡むと、この条件が大きく変化するという。
 ということは、条件によっては即時解放される形で、膨大なメタンガスが凍土の奥底や海底に存在していることになる。地球環境の変化で、このガスが一端放出され始めたら、大崩壊の危険があるといえよう。地球温暖化で海面上昇というのなら対処のしかたもあろうが、メタンハイドレートの崩壊がおきたら完全な破滅だ。考えるだけでも、身の毛がよだつ。これが杞憂ならよいが。

 探鉱で自国資源量の確定などするより、メタンハイドレートの基礎物性を徹底的に究明する方が緊急課題ではないだろうか。安定化の条件が分れば、エネルギー源としての利用に一気に進めることもできよう。さらに、ハイドレート構造の基礎研究が進めば、有望な応用が生まれる可能性もある。例えば、二酸化炭素ガスを取り込む方策も案出できそうだし、ガス輸送の新形態も生まれる。  メタンハイドレート研究は、地質学者にまかせておく課題ではなかろう。

 この分野では、凍土地帯の天然ガス田を運用してきたロシアが豊富なデータを持っている。大型共同研究の道はないのであろうか。


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