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2001.2.15
 
 


熱核融合実験炉建設を何故急ぐ…

 「国際熱核融合実験炉の建設費は約5000億円であり、これを国際的に分担することとなる。仮に、その多くを我が国が負担する...」といった議論が原子力委員会ITER計画懇談会で進んでいる。(http://mext-atm.jst.go.jp/jicst/NC/iter01/siryo/siryo14/siryo2.htm)
 「我が国が世界で唯一のITERを主導的に建設することは、この分野の科学技術力及び産業技術において世界のトップの地位を長期間維持できることとなる」ので、設置国として名乗りを挙げるらしい。
 しかし、「国際」といっても、米国は投資を止めた分野だ。(欧州のJETと日本原子力研究所のJT-60が臨界プラズマ条件を達成しており、米国は遅れている。)冷戦が終わり、原子力技術の先端競争よりも経済性が重視されれば、一国で資金の面倒を見れない程の巨大科学への投資カットは当然の流れだ。

 この投資は「妥当性について現時点で厳密な判断はできない」そうだが、少なくとも、様々な代替案と比較すべきだろう。熱核融合以外のエネルギー開発は数多い。エネルギー開発は緊急課題だが、熱核融合を優先すべき理由がわからない。
 超長期的な研究開発を続けざるを得ない分野に、今、大規模投資する必要性があるとは思えない。この分野で先頭を走ることが、エネルギー問題解決の最優先課題と考える人はいまい。

 しかも、これほどの大規模投資をしたところで、熱核融合が大幅に実用化に近づくとは考えにくい。高温プラズマを実現したところで、中性子線照射で材料は放射化したり劣化する。耐中性子性材料が開発できなければ、設備寿命が短かいからペイしまい。従って、低放射化フェライト鋼、SiC/SiC複合材料、バナジウム合金といった材料開発を徹底的に進めるとか、理論・計算機シミュレーションに注力すべきではないだろうか。こういった分野に投資を集中する方が、科学技術の成果を利用しやすいし、産業育成にも繋がり易いのだが、そういった議論は無い。核技術者の分野でないからであろう。

 こうした経済性が検討されていない大型プロジェクトは、一旦始まると、遅れようが予算が膨らもうが続行し続ける。例えば、米国の国立点火実験施設(NIF)は予算は倍かかり、実験開始も6年遅れるという。(2000年10月の第18回IAEA核融合エネルギー会議内容報告による。 http://mext-atm.jst.go.jp/jicst/NC/nc_iinkaif.htm)日本の財政は危機的状況にもかかわらず、このような大型プロジェクトを推進するつもりなのだろうか。


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