↑ トップ頁へ

2003.4.7
 
 


原発トラブルの元凶…

 原子力発電所の運転停止が続いているが、ようやく冷静に問題を議論できるようになったようだ。

 2003年4月、「平成14年度の原子力施設におけるトラブルについて(経済産業省所管分)」が公開された。これによると、平成14年度の、原子力発電所(研究開発段階炉を除く)のトラブル報告は12件だった。
 国際原子力事象評価尺度(INES)で見ると、このうち「レベル1」(深層防護の劣化の基準で見ると、運転制限範囲からの逸脱に当る)以上の該当はない。1件「レベル0+」があっただけで、安全に影響を与えたり、関係しないトラブルしか発生していない。(http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0003901/0/030404trouble.pdf)

 極めて安定した運転状態といえよう。

 にもかかわらず、この業界の信頼性は低い。「事故隠し」を繰り返してきたからである。
 今までは、問題がおきるたびに「事故隠し」を許さぬ仕組み作りが叫ばれ、なんらかの対処が行われてきた。お座なりの動きで、済ませてきたのである。
 しかし、最近は、現実を踏まえた動きも始まっているようだ。

 そもそも、原子力発電は絶対安全を確約して始めたため、トラブルが発生すると動きがとれなくなる。事故は起きないとの「虚構」で動いていたのだから、「事故隠し」をせざるを得ない訳だ。こうした環境を知りながら、誰も手をつけてこなかったのである。
 どう見ても、変革には、現実的な安全規制の導入は不可欠である。
 安全を高めるために、安全検査基準を下げるという、一見矛盾する動きに進むことになる。こうした動きに踏み込む意志が問われているといえよう。

 といっても、施設老衰化の状況で、安全検査の簡素化はおかしいという声もでるから、どこまでできるかは疑問ではある。しかし、少なくとも、本音の議論を始めるべきだろう。

 その場合、原子力の特殊性をはっきり示す必要があろう。
 原子力発電技術は、一般の産業技術と構造が違う。軍事産業に似ており、信頼性保証技術の塊なのだ。従って、技術構造上、コストの観点から議論しにくい産業といえる。
 民需産業に属してはいるが、軍事分野と見た方がよい。

 要するに、原子力発電を、エネルギー安全保障の観点で、国家の「武器」として位置付けるべきなのである。

 当然のことながら、「武器」だから、一般の産業とは大きく異なる。誤解を恐れず語れば、発電所は軍事基地と同じである。
 現実に、原子力発電所の事故に対する「保険」が成立しないのだから、この見方は正当といえよう。
 安全保障問題に、一般産業の安全性の考え方を取り入れる訳にはいかないのである。


 エネルギーの将来の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com