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2007.2.1 |
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石炭の位置づけがわからぬ…2007年1月、北見市で都市ガスの埋設管が折れ、そこから漏れたガスにより、中毒事故が発生した。(1)東京で、都市ガスが石炭ガスから天然ガスに代わったのは何時のことだったろう。ともかく、思い出せないほど昔のことである。(2)いわゆる、13Aと呼ばれるガス規格だ。当然ながらガスが漏れたところで、中毒することなどない。 ところが、北見市では違う。未だに、天然ガスへの転換を行わないまま。一酸化炭素を含むガスを、密閉性が高まる一方の一般家庭に供給しているのだから、危険このうえない。 しかも、すぐにできるエネルギーのクリーン化は、石炭/石油から天然ガスへのシフトの筈だ。都市ガスでの天然ガス転換など、とっくに終わったと思っていた。 ところが、違うのである。 資金上の都合による転換先送りを容認してきたのか、補助金の縛りがあるのか、あるいは、全国からガスの専門家を集めるのが難しいのか、理由はよくわからぬが、ともかく様子を見ながら徐々にしか転換を進めてこなかったようである。(3) 日本政府には、国民がエネルギーを安心して使えるように、安全性担保と安定供給保障の仕組みを考える気がないのかも知れない。 どう見ても、政府の最優先課題とは、現行の仕組みの温存だ。波風が立たないように、時代の要求に合わせて、なんとか上手くしのごうというだけ。 こんなことをしているから、北見市のガス中毒事故が発生すると言えないこともない。天然ガス転換を行う体力がない都市ガス事業は止めるとの決定ができないから、こんなことになるのである。 そもそも、これから人口は減少一途だ。そんな地域で、埋設パイプに寿命が来る。事業を続行したければ、膨大な新規投資が必要となる。ほとんどゼロから都市ガス網を作るようなもの。天然ガス転換でさえなかなかできないのに、そんなことができるのだろうか。 今のままなら、天然ガス転換と同様に、徐々に、新しいパイプの敷設工事を進めていくことになろう。 当然ながら、新パイプの敷設には長期間を要する。そのうち、パイプ破損が発生するのは間違いない。それでも、なんとかなるさ、ということだろうか。 都市ガス網維持が無理なら、どうすべきか早く結論を出すべきである。 米国のエネルギー政策も結構場当たり的だと思うが、このような日本の姿勢とは180度違う。日本では、企業の経営にに大きな影響を与えないような配慮を重視するが、米国は企業の経営姿勢に大きな影響を与える政策の考案に注力すると言ってよいだろう。 米国では、ビジネスには資本の論理が働く。収益性が見込めない事業は消えるし、有望となればヒト・モノ・カネが一挙に集まってくる。従って、ここを上手くつけば、産業構造は一気に変わるのである。 エネルギー分野での政策転換は、社会全体に大きなインパクトを与えるのは当たり前。日本は、このインパクトをできる限り抑えて政策転換を図ろうとする。無理筋である。 Bush政権の2007年1月の動きを見ればエネルギー政策の転換が与える影響の大きさがよくわかる。 “Reliable”、“Affordable”、“Environmentally-Sound”な「エネルギー安全保障」(4)への政策転換を余儀なくされたのだが、トウモロコシがエネルギー原料になるということで、すぐに価格が高騰。メキシコのソーホ経済相が、“主食トルティーヤ価格の高騰を抑えるため、無関 税でコーンを65万トン輸入すると発表”(5)したほど。 社会の基幹に係わる政策だから、転換を図れば至るところに影響が出る。影響が出ないなら、政策転換をしないということに他ならない。現行政策の手直しで進むということだ。 そもそも、“天然ガスへの転換”を本気で考えているなら、徐々に都市ガスの切り替えを図るという話になる訳がない。 ガスパイプライン全国網の構築ロードマップを作り、それと整合する形で都市ガス産業の大胆な再編を考えるのが筋である。 ところが、日本の政治には、そんな気力も、意志もない。ともかく既存事業者はすべて生き延びるように図るとともに、様々な業界の利害バランスを図るだけで精一杯。 もっとも、供給源の確保策も曖昧だから、とてもそんな話はできないのかも知れない。 対象となりそうなガス田は、ロシアでは北サハリンとヤクーツク近辺、海上では日本国境に近い東シナ海と海南島沖、中国内陸では長慶と重慶、遠方ではタリム盆地とイルクーツク北方地域、といったところ。わかっているのだから、どれを、どのように、パイプラインで繋ぐか提起する必要があるが、政治は、そんなことを議論する状況にはないようだ。 北東アジアでのエネルギーの運命共同体など夢だと思うなら、国際パイプラインを諦め、現行のLNG船運搬主導で行くとはっきり決めるべきである。 誰にでもわかるように、はっきり方針を打ち出さないから、いつも右往左往。交渉力が生まれる訳がない。 ともあれ、明確な方針を打ち出さないのなら、天然ガスを主流にする気は無いと見るしかなかろう。 そうなると、原子力発電への傾斜と、石炭クリーン化に進むつもりなのだろうか。 と言っても、前者の国内建設は嫌われる。それを乗り越える考えがあるようにも思えない。 すると、後者に賭けるつもりだろうか。 石炭は、巨大な埋蔵量を持つ国が多いから、技術開発に成功しさえすれば、安定したエネルギー供給源になる。それに、米国で民主党の力が強まっているから、石炭重視路線に進む可能性があるし。 石炭産業を抱えるMontana州のSchweitzer知事は、次のような提言をしたそうだ。(5) (1) 1バレル40ドルの下限設定 →この価格で収益性が見込めるクリーン石炭技術に投資 (2) 欧州型のクリーン補助金と非クリーン罰金制度を導入 (3) 連邦政府が石炭のガス化/液化と炭酸ガス処理のパイロットプロジェクトに投資 →最良の技術を同定し技術の進展促進 (4) 炭酸ガスの除去と地中蓄積のための規制の即時法制化 一方、日本では、この手の包括的な提案を聞いた覚えがない。個々のマイナーなパイロット・プロジェクトの話ばかりである。 石炭発電所を天然ガス転換すると石炭が余る。そうなると、石炭関連産業がこまるから、石炭利用を推進する必要があるとの政策展開はお得意だから、石炭の位置づけなど考えていないのかも知れぬ。 どうにかならないのか。 --- 参照 --- (1) “北見でガス漏れ3人死亡 埋設管老朽折れる CO中毒11人手当て” 北海道新聞 [2007.1.20] http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070119&j=0022&k=200701190079 (2) 地区により転換時期は違う.(1962年〜1988年) http://www.tokyo-gas.co.jp/Annai/ayumi/index.html (3) http://www.meti.go.jp/policy/policy_management/17fy-jigo-hyoka/tennengasu/17fy-jigo-tennengasu.pdf (4) http://www.whitehouse.gov/infocus/energy/ (5) http://commodities.reuters.co.jp/default.asp?pg=story&story=1CN001_20070113.xml&newstype=corn (6) THOMAS L. FRIEDMAN: “My Favorite Green Lump” New York Times [2007.1.10] エネルギーの将来の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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