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2007.6.28
 
 


日本のプルトニウム政策がわからぬ…

 ウラン[U308]スポット価格の高騰が続いている。(1)
 一昔前は、1ポンド10ドルの安定相場だったのが、一気に1桁上に進み、今や140ドル近辺。

 初めは、世界最大のウラン生産会社の鉱山が洪水で生産不能になったとのことで急騰したようだが、投機資金が一気に流れ込んだため、上昇が止まらなくなったのだろう。
 確かに、状況としては、わからないでもない。
 米国政府は原子力発電重視政策への転換を進めているし、ロシアの兵器解体ウランの米国への移転契約も早晩切れる。中国の今後の需要拡大スピードは凄まじく、これに供給がスムースに対応できるかという問題もある。(2)
 すでに、日本はカザフスタンへの首相訪問で資源確保に動いたし、中国もオーストラリアからの輸入体制を敷くなど騒がしかったから、投機的な動きが加速されるのはやむをえないかも知れない。

 とは言え、本当に140ドルになるなら、海水からのウラン抽出の商業プラントが可能となり、ストーリーは変わってくる。(3)
 いくらなんでも、そこまで需給がタイトになることはないと思うが。
 ただ、価格高騰のお蔭か、2007年6月には、米国でウラン鉱山開発申請とか、ロシアファンドの海外探鉱プロジェクト開始といったニュースが流れるまでになった。
 (北朝鮮もこれで資源国として、米国と交流できるということかも知れぬ。余計な話だが。)

 ウラン問題もさることながら、このおかげで、プルトニウム利用が重要課題になってきた。
 そのため、高速増殖炉へ目が向くようになった。
 コストを別にすれば、理屈では、魅力的な方式である。軽水炉と違って、超長期の半減期物質やマイナーアクチニドの問題を考えなくてもよいからだ。
 ただ、軽水炉より過酷な条件での運転になるから、商業化は簡単ではなかろう。

 この手の厄介な技術は、日本の単独開発は避けるべきだろう。
 と言うのは、今のやり方では、優秀なエンジニアを投入しても、実稼動は50年後になりかねないからだ。無駄な投資になるのが見えているプロジェクトは、止めるのが最良の選択だと思う。

 この分野の進展スピードは、今や中国が基準だ。
 なにせ、高速増殖炉を、技術ゼロから立ち上げた国である。さらに、巨大高速増殖炉へと一気に進めるつもりのようだ。(4)
 素人にしてみれば、チェルノブイリを想起させるから、そんなに急いで大丈夫なのかと言いたくなる動きではあるが。

 こんな状況にもかかわらず、日本はプルサーマルに注力するるもりだ。再処理工場が稼動してしまい、プルトニウムが蓄積され、国際公約が守れないから、致し方ないという理屈。
 こまったものである。

 長期的に見れば、ウラン鉱石は枯渇するだろうが、プルサーマルはこれに対応する技術ではない。エネルギーコストを高くするだけ。
 それに、日本型燃料棒でトラブルでも発生すれば、発電停止になりかねない。
 それだけではない。プルサーマルは、使用後の燃料処理が厄介だ。ゴミ処理を考えれば、プルサーマルは実に筋が悪い。

 こんな技術に注力してどういうつもりなのだろうか。

 --- 参照 ---
(1) http://www.uranium.info/prices/overview.html
(2) 神谷夏実(JOGMEC): 「世界ノウラン資源開発の動向」 2006年  http://www.jogmec.go.jp/mric_web/koenkai/060727/breifing_060727_1.pdf
(3) 玉田正男, 他: 「モール状補修システムによる海水ウラン捕集のコスト試算」 日本原子力学界和文論文誌 5(4) 358-363 [2006年]
(4) Xu Mi(原子龍科学研究院): 「中国の高速炉技術開発の近況と将来」 2006年
  http://www.jnc.go.jp/04/turuga/tief5/images/TIEF5-S1_2J.pdf
  [参考ウエブ] http://www.caea.gov.cn/   http://www.cnnc.com.cn/


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