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魚の話  2005年4月1日
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たいの話…

 庖丁も 厨もゆだね 桜鯛 中村汀女

 春といえば、昔から花見鯛である。この季節、雄が桜色になるため、その色を愛しんだのである。
 桜が咲くと、冷たい雨が降ることがあるが、そんな時は、花見を諦めて桜鯛で楽しむことになる。

 但し、この時期は正確には旬ではないそうだ。鯛が本当に美味しくなるのは、八十八夜過ぎ、と書いてある本が結構ある。

 鯛を年中食べている訳ではないから、本当のところはよくわからないが、この説は本当なのだろうか。

 細かなことを調べる気はないが、信じがたい説である。常識で考えれば、産卵前が一番美味しく、産卵後が最悪と考えるべきだろう。雄が雌の気を惹くためにピンク色に変わるのなら、桜鯛になる直前が最高と考えるべきではないかと思うのだが。

 もっとも、日本近海の赤系統の鯛は7種あるというから、混乱があるのかもしれない。(1)
 種によって旬が違う可能性があるからだ。
 例えば、真鯛なら春、血鯛が夏、黄鯛は冬が一番ということかもしれない。

 とはいえ、現実に目にする鯛のほとんどは養殖モノか、海外モノらしい。そうなると、このような見方がすでに意味を失っているかもしれない。
 難しかった桜色についても、餌を工夫すれば色揚げできるから、養殖モノでも十分楽しめるようになってきた。
 しかも、廉価なモノが登場してきた。有難いことである。

 家庭で気軽に鯛を味わう時代になった訳だ。そうなれば、なんといっても潮汁が一番だろう。
 この料理は極めて簡単である。さっと湯通ししてから、昆布と煮るだけで出来上がりだ。30分とかからない。
 これだけで、十分美味しい。

 実は、この料理には、懐かしい思い出がある。
 たまたまだが、高級スーパーで鯛を買って、家で潮汁を作ったのだが、それを察したらしく、近所の子猫が、突然、我が家に遊びに来たのである。
 塀の上を歩くので、たびたび見かけていた黒猫である。毛がつや光りしており、美猫。ご近所でも可愛さで有名だった。もっとも、名前を読んでも振り向くこともなく、気位が高い猫だと思っていた。
 実際、我が家には一度も遊びに来たことがない。
 それが、この鯛料理の時だけ、ニャーニャー鳴いて餌をせがむのだ。

 動物とは、現金なものである。

 --- 参照 ---
(1) 川崎洋「魚の名前」いそっぷ社2004年12月
 

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