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魚の話  2005年5月20日
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いわなの話…

 二三顆の あけびさげたる 岩魚釣 飯田蛇笏

 岩魚といえば、渓流の 奥の岩に生息する魚というイメージがある。
 もともとは、山女魚やヒメマスといった大きな魚では餌の量が不足しがちな、川の一番上流でひっそりと暮らしてきた魚だ。
 寒冷な場所に住む魚だから、関西以南にはいないかもしれない。

 おそらく、昔は、それほど獲れなかったろう。
 というより、渓流の食餌キャパシティは小さいから、獲り尽くさないように工夫していたと見るべきかもしれない。

 しかし、そんな心配は不要である。一気に養殖が進んでしまったからだ。
 相当前から、珍しい魚ではなくなった。活魚を簡単に運べる上、蓄養も可能だから、どこでも手に入る。
 おまけに、安価だ。

 わざわざ天然ものを指名する人もいないようだから、ほとんどの人は養殖モノで十分と考えているのだろう。
 食通を呼び寄せる力はないようだ。

 要するに、この魚は、住んでいる深山幽谷の景色を想い起こさせてくれるので、人気があると解釈すべきだろう。

 実際、釣り人は多い。

 訊ねると、岩魚釣りには時期があるという。
 雪解けが始まったとたんに、貪欲な位に餌を求めるという。ここが勝負時らしい。暖かくなると、岩魚に食欲がなくなるそうだ。

 素人は、この話、本当かなと思う。

 釣り人の話は本人に都合のよい話や誇張した話が多いからだ。
 そこが聞く方にとっては楽しみでもあるのだが。

 素人の読みでは、気温が上がり、虫が周りでブンブン飛び回って煩く、釣りをする気になれないということだが。
 こう睨んだのは、秋めいてくると又釣れるというからだ。岩魚が昆虫を食べたくなるのだそうだ。

 いろいろ聞いていくと、釣りには2つのタイプがあるようだ。
 それなりの幅がある流れのところでじっくり釣るタイプと、山に入り、谷を探し回りながら釣りをするタイプである。

 後者は、どう見ても、釣りの楽しみを加えた山歩き趣味だろう。
 こちらは、もしかすると本命は釣りではなく、山の宿と温泉ではないだろうか。こうなると、釣りが趣味でない人でも、行きたくなる。
 山で遊んだ後は、温泉で汗を流し、塩焼きと唐揚、それに山菜料理を味わう。山歩きの話を肴に岩魚の骨酒で静かな夜を楽しむ訳だ。
 深山と清流さえあれば、岩魚養殖の温泉宿は今後も繁盛しそうである。


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