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魚の話 2005年6月3日 |
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まぐろの話…敬老の 日の給食の 鮪鮨 角川源義今でこそ、寿司は大衆食だが、昔はそうはいかなかった。 志賀直哉「小僧の神様」は、“屋台のすし屋に小僧が入って来て一度持ったすしを価をいわれまた置いて出て行った”(1)情景から生まれた作品だ。 腹いっぱい鮪を食べさせてもらった小僧が、奢ってくれた人を神様と考えてしまう時代だったのである。それは、そんな昔のことではない。 それはともかく、大トロ、中トロ、赤身、は江戸前握り寿司の中核の種モノである。さらに、最近は、ヅケにも人気が集まっているようだ。 漢字の「鮪」は、元来はチョウザメを指す文字だというから、誰かが勝手にこの文字を当てたようだ。(2) どうも、肉が黒ずんだ赤色だから、マクロと名付けられたらしいが、魚偏に「有」という文字を選んだ理由は定かではない。 しかし、古くから食されてきたことは間違いない。万葉集では、「しび」として登場してくるそうだ。 (やすみしし 我が大君の 神ながら 高知らせる 印南野の 邑美の原の 荒たへの 藤井の浦に 鮪(しび)釣る 海人船騒き塩焼くと 人ぞ多にある 浦を吉みうべも釣りはす浜を吉み うべも塩焼く あり通ひ 見さくも著し 清き白浜) 大伴家持の歌もよく知られている。 鮪(しび)衝くと 海人の燭せる 漁火の 穂にか出でなむ わが下思を 今でも、「しび」が使われる地域はそこここに存在しているようだが、極めてマイナーな状況になってしまった。 この原因は、説明してもらわなくても想像がつく。 言葉遊びが好きな日本人にとって、「しび」は死の音を含むから、好かれない。他の名前に変えたい人は大勢いた筈だ。 従って、一般に広く出回るようになったとたん、「まぐろ」という呼び名が主流になったのだと思う。 但し、鮪といっても、結構違う種類の魚を集めた総称である。 本鮪とされる近海ものは、クロマグロを指すそうだ。(3) もっとも、近海で獲れると言っても、大西洋や地中海といった海外産も多いし、沖で育てて大型化させたモノも多いと聞く。 脂が濃厚なこうした鮪には、おそらく、水銀やダイオキシン等が濃縮されているだろうから、続けて食べない方がよいだろう。 と言っても、言うまでもなく、本鮪は高価だから、普通の生活を送っている人に注意する意味は薄いが。 普及品なら、メバチマグロである。 こちらは、赤道近辺の延縄漁で獲るそうだ。 メバチマグロが獲れる海域では、キハダマグロも揚がるらしい。 こちらは、あっさりした赤身が多い。 日本人は、これだけではとても足りないから、南半球の低水温域からも鮪を調達してくる。これが、ミナミマグロだ。高く売れるから、オーストラリアは鮪事業に熱心なようだ。 言うまでもないが、食べる方からいえば、長さ3m、300キロといった大型マグロが望ましいが、小型モノも多い。ビンナガである。 こちらは、どこにでもいる鮪といえる。 当然ながら、ツナ缶用である。 冷凍技術が発達したから、解凍後に生で食べても十分すぎるほど美味しいため、刺身や和え物にして食べることが多い。 しかし、おそらく、昔は違っていただろう。 醤油・味醂に漬けたヅケや、火を通す鍋ものが多かったのではないかと思う。 昔を懐かしむ訳ではないが、食文化の多様性を保つためにも、鍋もの用の鮪も流通させて欲しいものである。 ・・・という気になったのは、実は、次の句の影響である。 四代を 生きて傘寿や 葱鮪鍋 町田しげき --- 参照 --- (1) http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/31/5/3104620.html (2) 名前の話については: 川崎洋「魚の名前」いそっぷ社2004年12月 (3) http://www.japantuna.or.jp/qa/qa02.html 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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