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魚の話  2005年7月1日
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うにの話…

  馬糞海胆 息をしてゐる 干潟かな 辻桃子

 生きている海胆(うに)をじっと見ていると、刺の動きがとっても面白い。見飽きない。古代から生き抜いてきた生物の神秘のようなものを感じてしまうのかも知れない。

 もっとも、そんな感慨にふける人は稀かも知れないが。

 馬糞ウニといえば最高級品だから、普通は眺めるより、先ずは味見だ。旬の国産品を賞味するなど、いまや贅沢そのものである。

 お金さえだせば、殻つき馬糞ウニでさえ簡単に手に入る。お客さんが喜ぶから、料理屋さんが要求するのだろうが、中身が見えない海産物を自信を持って売る水産業者の勇気には驚く。山のようにウニを売るなら別だが、何個か売って、外れが入っていたらどうするつもりなのだろうかと心配になる。
 などと言うのは、余計なお世話かもしれないが。

 こんな高級品市場もあるが、全体としては、ウニは普及品と見てよいだろう。

 冷凍ものの普及が進んで、餃子と並んで宅配冷凍品目に入っていたりする位だ。これはチリ産らしいが、素人が冷蔵庫で解凍しても、結構いける。スーパーの陳列品との差は感じない。

 獲り立てを軽く蒸し、明礬で安定化した後、急速冷凍するらしいが、冷凍技術と品質管理の進歩には恐れ入る。
 もっとも、ここまでくるのに、担当者の苦労は並大抵ではなかったようだが。(1)

 生ウニは寿司屋の人気商品だし、スーパーの売り場にも常時並んでいるところを見ると、ウニ好き人口は相当多そうだ。この需要に応えるのだから、大変である。担当者の方は、世界中から美味しいウニを探し出し、どう運ぶか日夜苦闘を重ねている訳だ。有難いことである。

 ところで、ウニの食べ方は色々あるとはいえ、生を山葵でいただくのが一番と思っていたが、そう考えない食文化があるようだ。
 北三陸では、海水で鮑と一緒に煮込む「いちご煮」を最高と考えるらしい。この不思議な名前は、煮込むと、ウニが黄色の野いちごに似ているところから来ているそうだ。と言うことは、もともとは高級食ではあるまい。おそらく、余りものの鮑を美味しく食べるために始めた料理だろう。ウニ食に相当思い入れがあることは間違いあるまい。

 珍しいから、郷土食として売り込むには絶好だが、問題はお値段だ。それでも、「いちご煮」缶詰を結構見かけるようにはなった。但し、潮汁として食べるのではなく、炊き込みご飯の素として重宝されているらしい。

 生ウニから缶詰に話が移ってしまったが、実は、個人的には、ウニ生より加工品の方が好きである。昔からある、食塩を加えて熟成させた瓶詰めのことだ。こちらは、ご飯に雲丹と海苔の世界である。
 生臭さがなくて美味しいと思うのだが、そう考えるのは少数派のようである。残念だ。

 どうしてかわからないが、雲丹の本場は下関だ。(2)
  (理由は知らないが加工品のウニは漢字が違う。)
 海産物としてのウニなら、おそらく北日本海の漁港の方が良質だろう。下関が品質優位に立つ根拠はなんなのだろう。大いに気になる。

 と言うのは、慣れているせいか、安物でない限り、下関モノが美味しいからである。
 そう信じてしまったのは、北日本海の絶品と称している、粒雲丹瓶詰の冷凍品を取り寄せたが、なんの感激も湧かなかったからである。味付けでも違うのだろうか。
 もっとも、違うものを数回食べただけで、結論付けるのはあまりに乱暴かもしれない。

 それに、江戸時代から有名な越前雲丹を試さないで、勝手なことを言うなとしかられそうだ。

 こちらは、越前浜の旬モノをうに板に並べて塩をふり、色が赤くなったら笊に入れて陰干しにし、これを桶に詰め熟成させたものだという。
 おそろしく手間暇をかけた加工品である。(3)

 これぞ逸品という感じだ。
 ここまでくると、ご飯に雲丹の世界ではあるまい。これはカラスミやコノワタといった世界である。一寸違うのである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.inabata.co.jp/recruit/ikdocument/index_02.html
(2) http://www.japanfoodnews.co.jp/zenchinren/yamaguchi/yamaguchi.htm
(3) http://www.tentatu.com/te/se/ayumi/ayumi.htm

 

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