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魚の話  2005年7月8日
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いしだいの話…

 主知的に透明に石鯛の肉め 金子兜太

 石鯛の名前はレストランではよく耳にするが、釣りの現場では余りお目にかかったことはない。
 「幻の魚」と呼ぶ釣り人もいるから、ボウズで帰ってくることが多いのだろう。

 それでも、磯釣りに、一端はまると止められなくなるようだ。四季を通じて楽しめる釣り場もあるらしいから、休みの日には早朝からイソイソとでかけるらしい。
 石鯛だけは、釣り以外は、銛か刺し網で獲るしかないので、効率が悪く、漁師は相手にしたくない訳だ。もっぱら、マニアが釣りあげる魚なのである。
 要するに、食べるより、釣りを目的とする人が狙う魚といえよう。

 大物が釣れると大騒ぎになるようだ。記念撮影と魚拓が待っている。
 確かに、凄い。なかには超大型の80センチまであるそうな。
 釣り人が、“威風堂々でしょう”と胸を張るだけのことはある。
   日時:○年○月○日
   釣場:○○○
   釣果:石鯛50センチ 2.6キロ1枚
   釣種:ハリス12号 ヒラマサ鈎14号
   エサ:ヤドカリ
   釣人:△△△△△
 釣果と自分の名前を書き込んで、喜びが最高潮に達する。

 なにが、それほど魅力的なのか聞いてみると、滅多に釣れないからだと。釣れると万歳三唱したくなる程だとか。釣果を夢見て、糸を垂れる気分がたまらないらしい。
 特に、掛かった時の強力な引きが堪えられない面白さのようだ。大型だし、頑丈な口を持っており、おそらく獰猛な魚である。名前は鯛だが、真鯛や黒鯛とは全く違って強い奴だから、アタリが出た瞬間に緊張が走るだろう。この感覚が楽しい訳だ。

 釣りをしない人間にとっては、料理と味の方が気になるのだが、釣り人は褒める一方だから、本当のところはよくわからない。
 刺身を食べたことがあるが、その時の印象はシコシコ感である。鯛とはかなり違うが、美味しかった。もっとも、成熟した大振りの新鮮な魚なら、刺身で食べれば美味しいのは当たり前だろう。
 そのうち、養殖モノで試してみようと思う。

 この魚はどう見ても、その姿から鯛の近縁ではない。真鯛が最高と思っている人にとっては、じっくり味わえば、たいした魚ではないとの結論に落ち着く可能性も高いとおもう。
 どちらかと言えば熱帯魚に近い印象を受ける。色が黒系だから、たまたま余り違和感が湧か無いだけである。

 性格も相当違うと思う。
 真鯛“しっかり”なら、黒鯛は“臆病”だろう。そして、石鯛は“好奇心旺盛”といった感じではなかろうか。

 だいぶ昔のことだが、京急油壺マリンパークで、石鯛君の輪くぐりと、足し算を見たことがある。お魚の話で一世を風靡した、末広恭雄博士が初代館長として力を入れた催しものの一つだった。
 なんとなく、人にすぐ懐く感じがする魚である。キョロキョロしながら、人を眺めるタイプである。

 この芸がまだ続いているなら、行こうかと思ってウエブを見たら、「“昼食代と入園料” セットになってこんなにお得!」(1)が掲載されていた。

 う〜む。
 今は派手な水族館があちこちにできたから、競争なのだ。

 石鯛君も、芸をするのはおそらく若いうちだけだろう。魚の成長は早いから、いつも次ぎの魚を用意しておく必要があろう。見る方は楽しいが、教えるのは大変な苦労だと思う。何時までも続けてほしいものだが。

 生簀でも楽に飼えるらしいから、家の水槽で餌付けすれば可愛いと思うが、大きすぎるか。
 幼魚時代は余り磯にいないそうで、成長するともっぱら磯に居つくようだ。そして、大成してくると、縞が消滅していくのだそうである。外房なら、どこでも獲れるらしい。

 --- 参照 ---
(1) http://www.aburatsubo.co.jp/restaurant/logterrace.htm


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