トップ頁へ>>>
魚の話  2005年8月26日
「魚」の目次へ>>>
 


いかの話…

 佐渡おけさ 踊るうしろの 烏賊釣火 影島智子

 烏賊(イカ)の旬を聞くと、常識が無い輩とみなされる。夏に決まっているのではないかと言うのである。
 ところが、その一方で美味しいのは冬であると断言する人がいる。通説ほど当てにならないものはないから、魚屋さんに聞いてみると、なんと「スルメイカ」は一年中獲れるそうである。秋が結構太っているようだという。冷凍が普及して季節感が薄れたとも言えないらしい。

 但し、こんなことが言えるのは、活イカを遠距離直送できるようになった現代のことで、江戸時代は、ホトトギスの時期の烏賊売りの声が季節感を誘ったらしい。江戸庶民にとって鰹は高嶺の花だが、烏賊は日常食だったに違いない。

 もっとも、スーパーに並ぶ、透明感ある茶褐色のイカが最良かははっきりしていないようだ。と言うのは、獲りたてを急いで氷詰めすると白くなることが多いからだ。ちょっと置いておくと、茶褐色に変わるので、この時を狙って氷詰めするらしい。タイミングが重要だという。
 まあどちらにしても、気温の低いところでの作業だし、10分とか20分の差だろうから、鮮度には大した影響はないだろう。しかし、作業をする方は大変だ。

 言うまでもないが、ここで言うイカとは「スルメイカ」のことである。日本で流通しているのは、ほとんどがこれである。

 と言っても、他のイカもあるから、旬が無いと言う訳にはいかない。
 その辺りは、お寿司屋さんで本気に修行している若い職人さんから教えてもらうとよい。本から得られる知識より、現実の方が面白い。

 折角だから、まとめておこう。

 初夏が旬なのは「障泥(馬具の“あおり”)イカ」である。確かに甘くて美味しい。釣り人がとんでもない形状の派手なルアーを使って狙っているイカだ。お値段がもっと安ければ有難いのだが。

 この頃、同時に入ってくるのが、小振りで身が薄めで、上品な感じがする「槍イカ」。こちらは、比較的長い期間見かける。

 それに引き続いて秋から年末まで楽しめるのが「墨イカ」(甲イカ)だ。ボデッとした感じだからすぐにわかる。他に比べれば身が柔らかい。イカにしては味がついている。
 知らなかったが、「紋甲イカ」は日本産(カミナリイカ)の名称だそうだ。余り獲れないらしい。大きくて、身も厚い、いかにも海外品種(アフリカ産はヨーロッパコウイカ)の印象だがそうではないようだ。

 あと、有名なものとしては、「蛍イカ」位だろうか。こちらは春にスーパーに並ぶお馴染みのイカだ。すでに茹でてある上に、芥子酢味噌付きのパック商品になっており、便利な商品である。
 もっとも、今や、烏賊刺し、烏賊素麺、もパック商品で並んでいるが。

 ・・・とここまでくると、イカがだいたい分かった気になる。

 おっと、忘れていた。
 「槍イカ」系の「剣先イカ」である。このスルメは、小さい上に薄くて裂き易いから、一度食べた人はすぐに思い出す。もっとも、個人的には、何時までも旨味を感じる堅いスルメの方が好みだが。

 こんなところかな、と思ったが、スルメイカ(アカイカ科)はさらにいくつかに分かれるようだ。国内でも、スルメイカとアカイカは別なものらしい。素人からみれば、足の長さや、三角形の耳の形が一寸違う程度で、たいした意味はないような気がするが。
 しかし、純粋「スルメイカ」以外を「バカイカ」と呼ぶ人がいるところを見ると、味は結構違うのかもしれない。

 アカイカ科は、世界中の海で日本向けに獲られているから、すでに我々は様々なイカを食べている訳だ。(1)

 そのうち青色LEDの集魚灯を使って、遠洋イカ漁はさらなる効率化が図られるようだ。しかし、そうなっても、イカは、類稀な生命力と貪欲な食欲で、生き残りそうな感じがする。
 烏賊という漢字はそんな感覚にぴったり合う。

 --- 参照 ---
(1) 大型イカ釣り漁船の対象は、ニュージーランドスルメイカ、アルゼンチンマツイカ、アカイカ
  http://www.fishworld.or.jp/fisherman/ryoushi/knowledge/enyou/enyou_4.html
(参考) 講談社編「目利き・味聞き さかなの本―おいしさ選びのチェックポイント集(2)」講談社 1988年
   

 「魚」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2005 RandDManagement.com