トップ頁へ>>>
魚の話  2005年10月7日
「魚」の目次へ>>>
 


くらげの話…

  沈みゆく海月みづいろとなりて消ゆ 山口青邨

 魚や植物を小さな槽内で育てるのが流行っている。お陰で、水槽メーカーの業績は好調のようだ。(1)

 少し前は、クラゲ飼育に人気が集まっていた。水のなかをゆらゆら揺れるように泳ぐ小さなクラゲを見ていると癒されるとのことである。
 くらげの飼育は結構面倒だが、そう難しいものではないようだ。(2)

 流行るのも無理は無い。海のただなかの姿の方を見ていると神秘感に襲われる。
 どうしてこのような生物が生き残れるのが不思議な感じがする。(3)

 ニッチ的に生き抜いてきた動物だと思っていたら、そうではないそうだ。かつては海はクラゲのものだったが、脊椎を持つ魚にその地位を奪われたとのことだ。

 しかし、このところのエチゼンクラゲの大繁殖を見ると、クラゲの巻き返しが始まったような気がしてくる。

 エチゼンクラゲ(4)は傘が1m位、重さ100kg程度の大型クラゲだ。刺す話はないようだし、中華食材(5)にもなるから、結構役に立っているのだが、ここのところやっかいもの扱いに変わってしまった。

 それも道理だ。底曳では数個、定置では数百個もが網に入ってくるという。こんな、とんでもない量に対処していたのでは、とても漁どころではなかろう。(6)

 このクラゲは中国沿岸で生まれ、対馬海流に乗り日本海を北上してくるらしい。その間僅か3〜4ヶ月だが、プランクトンを食べて一気に育つらしい。

 専門家によれば、エチゼンクラゲ大量発生の原因は3つあるらしい。(7)
  ・餌の増加 (富栄養化による動物プランクトン現存量の増加)
  ・越冬化 (冬季温暖化による死亡率低下)
  ・競合減少 (乱獲による鰯類の減少)

 これだけでは説明できないような気がするが、少なくとも、これらが大量発生を支えているのは間違いあるまい。

 そうなると、クラゲはこれから益々増えることになる。餌はクラゲの独占状態になる可能性もある。そうなると、鰯類の復活は阻まれる訳だ。
 クラゲの時代である。

 クラゲに癒されるどころではない。

 --- 参照 ---
(1) http://www.nisso-int.co.jp/index8.html
(2) http://www.scc.u-tokai.ac.jp/sectu/kaihaku/umihaku/vol24/v24n5p4.html
(3) http://www.nature-n.com/ocn_odsy/htm/0601-j.htm
(4) http://www.tbs.co.jp/seibutsu/zukan/museki/htmls/museki_05.html
(5) 明礬を使って何回も塩漬けを繰り返して水分を抜く。ほとんどが輸入品である。
(6) photo by 西村剛 [毎日新聞]
  http://64.233.167.104/search?q=cache:5s2S2MWAEaQJ:www.mainichi-msn.co.jp/keizai/photojournal/archive/news/2005/08/06/20050807k0000m020023000c.html+%E8%A5%BF%E6%9D%91%E5%89%9B+%E3%82%A8%E3%83%81%E3%82%BC%
(7) http://home.hiroshima-u.ac.jp/hubol/essay/gyojelly2.html
 

 「魚」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2005 RandDManagement.com