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魚の話  2005年12月2日
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あんこうの話…

 鮟鱇も わが身の業も 煮ゆるかな 久保田 万太郎

 「鮟鱇」との立派な漢字があるから、アンコウには特別な言われがあると予想していたら外れた。音に合わせて作った文字だという。(1)
 と言うことは、昔は今ほど注目を浴びる魚ではなかったのだろう。

 この魚が人を惹きつける素は、なんといっても、こってりした旨さのアンキモにあると思う。
 特に、冬のアンコウ鍋人気はすごい。
 冷凍技術が発達して、家庭でも簡単にできるようになったので、益々流行っているようだ。

 しかし、専門店で食べるのも楽しい。東京都選定歴史的建物で、軽く飲みながら、江戸風情を愉しむのである。
 靴を脱いで下足札を受け取って座れば、下町方の気さくな対応の仲居さんが人数分の鍋を出してくれる。この仕組みは昔から変わらないそうだ。予約を受け付けないのもしきたりだという。
 ただ、昔は、高級魚で、冬場はもっぱら上流階級が食しており、春になってようやく庶民が手の届く価格になったと言われている。一寸、話が違うとの感じもしないではないが。

 もっとも、そんなことより、おじやでしめる食の楽しみがメインだから、どうでもよい話だが。

 高級と言うが、料理はなんの工夫もない“鍋”だ。
 水戸光圀流の正統料理「どぶ汁」のつくり方に従えば、キモを味噌で溶いて鍋の汁にするらしいが、ほとんどの場合は、わりしたですべてを煮るだけである。

 要するに、この鍋の喜びとは、七つ道具[トモ(肝)、鰭、ヌノ(卵巣)、柳肉(身肉、ホホ肉)、水袋(胃)、鰓、皮]すべてを食べ尽くす点にある。
 (実際、除くのは背鰭位しか無いようだ。オット、骨も食べないが。)

 事典(2)には、江戸川柳が掲載されているが、鉤吊りにした部位だけは残すのだろうか。

   あんこうは 唇ばかり 残すなり

 皮にしても、特段に旨いモノとは思わないが、湯がいて黒くなったものを、味わうと、なんとなく満ちたりた気分になる。
 比類なき魚と言えよう。

 --- 参照 ---
(1) 川崎洋「魚の名前」いそっぷ社2004年12月
(2) 魚類文化研究会編 望月賢二監修「魚と貝の事典」柏書房 2005年
 

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