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魚の話  2005年12月16日
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しじみの話…

 しじみ汁 菊枯れし宿の 蔀越 室生犀星

 蜆(しじみ)といえば冬の味噌汁のイメージが強い。しかし、こんな話は通用しないのかもしれない。
 江戸の頃は、蜆といえば、淡水のマシジミ。当然、旬は冬だった。ところが、現在売られているのはヤマトシジミだ。こちらの一番美味しい季節は夏らしい。

 もっとも、スーパーに並ぶのはもっぱら輸入品だから、季節の違いより、産地の違いの方が大きそうだ。(1)

 蜆の歴史は古いそうで、(2-1)、縄文時代から食べられていたという。日本人の大好物と呼んでもよいのではなかろうか。

 実際、万葉集では「四時美」と呼ばれている。おそらく、四季を通じて美味しい貝という意味が含まれていると思う。

  住吉乃 粉濱之四時美 開藻不見 隠耳哉 戀度南 (万葉集6巻997番)

 とはいえ、どうして蜆の味噌汁が嬉しいかといえば、・・・。

  深酒を 悔やみて 蜆汁啜 紫土 [ハイクブログ](3)

 なんといっても、これが蜆汁の醍醐味である。

 とはいえ、折角なら、二日酔いでない時にじっくり賞味したいものだ。

 蜆汁は、料理の素人がつくっても、一寸した手間をかければ格段に美味しいからである。

 コツというほどのものではない。ともかく、砂抜きに労を惜しまないことに尽きる。砂抜き蜆が売られているとはいえ、一瞬のジャリジャリ感で一変に気色が悪くなるから重要である。

 砂抜きといっても簡単だ。要は、「静か」に放置すればよい。貝殻を洗ったりして驚かせたら、貝はしばらく口を開かなくなるから、絶対駄目だ。
 但し、水道水は避けた方がよい。塩素臭が抜けないからである。といって、硬水のミネラルウオータの効果は疑問である。ベストな水は活性炭ろ過水だと思う。
 もしもなければ、水道水に炭をいれておくだけで十分である。

 体験から言えば、砂抜きは塩水でも真水でもどちらでもそう変わりがないように思うが、“真水中にしじみを入れますと、体内のおいしい成分が外に出てしまいおいしくなくなります”ということだから、そこまで頑張ってもよいだろう。たいした手間ではないし。(2-2)
 尚、専門家のアドバイスによれば砂抜きは“6時聞から12時間ぐらい”で、“砂抜き後、水からしじみを取り上げ空気中に六時間ぐらい放置すると一段としじみ の味が向上”するそうだ。
 そこまでしたことはないが、やってみる価値はありそうだ。

 経験から言えば、砂抜きで一番重要なのは、水の量である。できるだけ浅くして、貝の重なりを減らし、貝殻が多少水面に顔を出す程度がよい。そして濡れたティシューを被せておけば完璧である。砂抜き表示モノでも、最低3時間は欲しい。
 十分砂を吐かせてから、貝殻をよく洗うのも忘れてはならない。

 後は、「静かに」煮るだけ。
 煮ている時のかき回しは厳禁である。砂を吐いたといっても、砂はかならず残っているからだ。静かに煮て、砂を鍋の底に沈ませるのである。

 ここで注意する点といえば、急に温度を変えないことだ。湯の量が不足している時は、加水せず、お湯を静かに足す。余計なことをせずに、せいぜい、アクだけ掬いとっていれば十分である。

 もっとも、いつまでも煮ていると不味くなるから、口が開いたら、すぐに加熱を止めないと台無しだ。

 直ぐに賞味したいところだが、面倒でもペーパータオルで濾して、砂を取り除く努力は無駄ではない。

 そうだ、今日は、蜆汁にしよう!

 --- 参照 ---
(1) http://www.toukei.maff.go.jp/dijest/sakana/sakana08/sakana08.html#目次3
(2-1) 品川明「しじみのはなし」[学習院教育新書「生活紀行」1997年]
   http://mirabeau.cool.ne.jp/shiohigari/shinagawa/index.html
(2-2) http://mirabeau.cool.ne.jp/shiohigari/shinagawa/shijimi5.html
(3) http://rwn.jp/h/ichiran.php?kg=2309

 

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