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魚の話  2006年1月27日
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ふなの話…

 水を釣つて 帰る寒鮒 釣一人 永田耕衣

 釣れるフナといえば、3種類に限られるようだ。

 小さい方から並べると、金鮒、銀鮒、源五郎鮒となる。

 源五郎鮒は肩が張ったような感じで結構大きいから、釣果の実感を味わうことができる。釣り人の話だから、信頼性は今一歩だが、50cmを超える源五郎を釣ったという人もいるらしい。
 この鮒は、どこにでもいるが、もともとは、琵琶湖の鮒で、関東にはいなかったという。おそらく、人気が高いので、あちこちで放たれたのだろう。
 人気の根源は大きさより、餌にありそうだ。金や銀だと動物性の餌を好むから赤虫が必要となり、準備が面倒だ。一方、源五郎の食性は植物性だから、マッシュポテト団子で済む。これなら、思い立てば、すぐに釣りにいける。
 今は、フナより楽な、ブラックバスという時代のようだが。

 釣り人は、源五郎を“ヘラブナ”と呼ぶ。どうも公的な名前はお嫌いな人が多いようだ。
 「金」も同じことがいえる。“金太郎”と呼ぶらしい。この種は、元気がよいのかもしれない。
 そして、「銀」は“マブナ”。一番小振りだと聞かされるが、それでも、大きいものは30cmになるという。

 良く知られるが、ギンブナだけは、ほとんど雌ばかりである。
 “ほかの魚、たとえばウグイやドジョウの精子で受精させても、卵は正常に発生する”のだという。(1)
 不思議な魚である。「雌性発生生殖」という仕組みだそうだ。(2)

 昔は、フナは、釣りを愉しむというより、もっぱら食用だったと思うが、今では、時々、鮒の甘露煮を見かける位だ。鮒料理を提供する店は稀なようだし、面倒だから、家庭料理も廃れてしまった。
 唱歌 “・・・小鮒釣りし かの川 夢は今も めぐりて 忘れがたき故郷” 発祥の豊田村でも、作詞者の記念館はあるが、鮒料理の伝統は消えてしまったようだ。(3)

 とはいえ郷土料理を受け継いでいこうと頑張っている地方もある。
 熱心なのは、香川の“てっぱい”(4)、岡山の“鮒飯”(5)、名古屋の“鮒味噌”(6)、佐賀県鹿島市の“ふなんこぐい”(7)、八郎潟の“吸い物”(8)、といったところだろうか。

 もっとも、フナ食で有名なのは、このような家庭料理より、鮒鮓(フナズシ)だろう。
 こちらは、原料は特殊で、琵琶湖特産の“ニゴロブナ”ということになっている。素人が見ると、源五郎と似ているような気がするが、固有種だそうである。当然ながら、希少種化が進んでいる。(9)
 源五郎とニゴロでは味は違うのだろうか。
 希少種でなくてもよいのではないかと思うが。

 --- 参照 ---
(1) http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/detail/50520.html
(2) 「・・・三倍体および四倍体ギンブナ・・・の雌性発生生殖とクローン性の証拠」
  http://www.miyagi.kopas.co.jp/JSFS/PUBS/KAISHI/point/67-2j.html
(3) http://www.vill.toyota.nagano.jp/in/02_kanko.html
(4) http://www.pref.kagawa.jp/suisan/html/suisan/kawasakana/kawa1.htm
(5) http://www.city.okayama.okayama.jp/museum/eco-partner/vol12-1.html
(6) http://www.city.nagoya.jp/kankou/sansaku/gourmet/nagoya00000027.html
(7) http://www.yomiuri.co.jp/tabi/archive/theme/gourmet/wa050202.htm
(8) http://www.pref.akita.jp/akino/project/chisan/04-03/chi04.htm
(9) http://www.pref.shiga.jp/g/suisan/b_nigoro.html


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