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魚の話  2006年3月31日
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たから貝の話…

  引き潮の 汀に光る たから貝 息深く吸い そっと拾いぬ   竹田董(1)

 もともと、『貝』という漢字は、「たから貝」の模様を表わす象形文字だから、「たから貝」は貝の代表と言ってよいだろう。
 確かに、この漢字を、左右に分けると、開いた口の感じがよくでている。

 黄河文明圏の中心に位置する、殷墟からは6000枚もの貝貨が出土したそうだ。(2)そんな昔から、「たから貝」には、財産的な価値が認められていたのである。
 ところが、黄河から見れば、いかにも辺境と言えそうな、揚子江上流の四川は成都平原の、三星堆(3)、金沙、船棺といった遺跡からも大量に発見されたという。「たから貝」を模した玉まで出土しているというから、「たから貝」の価値は相当なものだったようだ。この地域では、知られない絵文字もあるようだから、研究が進めば、貝の使われ方もわかってくるかもしれない。

 それにしても、南洋の貝が、産地から遠く離れた内陸部で大量に集められたのだから、驚きである。

 日本でも、イモガイの腕輪、タカラ貝の首飾りといった装飾品は存在していたと思うが、財としての価値は低かったようである。古事記を見ても、「蛤」は登場しても、「たから貝」は登場しないからだ。
 と言っても、中国の「たから貝」文化は入ってこなかったという訳ではなさそうだ。驚いたことに、富山から川づたいに奥に入った地域の遺跡から、土製の模倣品が出土しているのである。(4)
 中国文化の影響かどうかはわからぬが、内陸部でも「たから貝」が尊ばれたのは確かだろう。

 とは言え、日本では、貝貨より、安産のお守り「子安貝」の方が馴染み深い。こちらの名前にしてくれればよかったのにと思う。

 ともあれ、グローバルで見れば、貨幣価値があった貝だから、貝のコレクションといえば、先ずは「たから貝」ということになろう。という事で、一寸調べたら、日本に素晴らしいコレクションがあるそうだ。河村コレクションと櫻井コレクションである。(5)折角のコレクションなのだから、写真をウエブで公開してくれたら、貝ファンも増えるのではないかと思うのだが。

 もっとも、様々な「たから貝」の調査分析結果を発表しているホームページを眺めれば十分と言えそうだ。(6)
 このサイトで様々な貝を眺めていたら、オトメダカラ、ニッポンダカラ、テラマチダカラが日本三宝とされていることに気付いた。価格は知らないが、コレクターなら必ず欲しくなるモノのようだ。
 素人でも耳にする名前のハチジョウダカラの写真を拝見したら、タカラガイ三十六歌仙氏の歌が掲載されていた。上品とは程遠いが、こんなところが「たから貝」の人気の素なのかもしれない。

 このサイトを作成している真野氏によれば、フィリピンでは、標本として出回っている希少貝を探すだけで生計を立てている漁民がいるそうだ。[2005.11.20]

 フィリピンから、世界中の売店に貝が輸出されているのかもしれない。
 そして、安価に仕入れて、桁違いの値段で売る商売が存在しているのだろう。
 などと、つい思ってしまうのは、無知な日本人相手に、とんでもない値付けで標本を売るミュージアムショップがあるから注意した方がよいと語る人が結構いるからである。
 もっとも、そんなことは、殷の時代からあったような気がするのだが。

 --- 参照 ---
(1) いちかわ文芸 http://www.city.ichikawa.chiba.jp/media/sirase/sirase250514.htm
(2) http://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E9%92%B1%E5%B8%81#.E8.B4.9D.E5.B8.81
(3) http://zh.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%98%9F%E5%A0%86%E9%81%97%E5%9D%80
(4) 高山市岩垣内遺跡の出土品 http://www.maibun.gifu-net.jp/shosai/63-3531.htm
(5) http://research.kahaku.go.jp/department/zoology/collection/shell.html
  河村良介コレクション: 「美しい世界の貝」 科学博物館後援会 1991年
(6) 「宝貝コレクション」 http://www1.linkclub.or.jp/~smano/


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