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魚の話  2006年4月7日
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さよりの話…

  サヨリは うすい
   サヨリは ほそい
  ・・・   ─六つの子供の歌より─    北原白秋作詞・團伊玖磨作曲 (1)

 サヨリは人気ある魚だが、春の訪れを告げる魚とされ、特に、日本海側で喜ばれているようである。
 大切にしている素敵な漆器の御椀で、「結びサヨリ」のお吸い物を愉しむ習慣があるのかも知れない。

 銀色とはいえ、透明感があり、美しい魚だ。しかも、淡白で甘みがあり美味しい。おそらく嫌いな人はいないだろう。
 但し、外見は綺麗でも、腹の中は真っ黒。苦味のもとになるから、しっかりと取り去り、十分水洗する必要がある。と言っても、それほど面倒というほどでもないが。
 ちなみに、腹黒でも、外見が素敵ならそれだけで十分と考える人のことを、サヨリストと言うそうだ。

 海面すれすれを泳ぐし、透き通ったような肌だから、黒幕でもなければ、腹の中に光が差し込んでしまう。これを避けるためには不可欠なものなのだろう。
 実際、この魚は、泳ぎながら、“長い下あごをスプーンのように使ってプランクトンをすくい取ったり、海藻をひっかけて食べている”(2)らしい。胃のなかで光合成でも始まって、酸素でも発生したら腹が膨れて大変なことになってしまうだろう。細身の体を保つには、それなりの努力が必要なのは、魚に限らないのはご承知の通りである。

 沿岸で群れをなして泳ぐ魚だが、まさに、銀色に輝く光の筋が流れているように見える。しかも、その動きは、驚くほど、素早い。
 獲るのは結構難しそうに思ってしまうが、それは素人考え。
 2隻の船がペアになって、間に延ばした網を引き回すことで、水面で泳いでいるサヨリを集めることができる。

 もっとも、素人でも、岸壁で、結構簡単に獲れる。群れが岸まで来ていれば、コマセを撒いているだけで、釣れるのだ。もちろん、売り物になるような大きさではないのが普通だが。
 但し、年季が入った釣り人から、なんだ鉛筆釣りか、と揶揄されることは覚悟しておいた方がよい。

 しかし、腕を自慢する釣り人も、鉛筆レベルのサヨリが嫌いな訳ではない。目刺を購入したりするのである。
 塩水に小1時間漬けて数時間干すだけで、立派な丸干しが出来上がるのだから、自分で釣ればよさそうに思うのだが、プライドが許さないようである。

 丸干しは、軽く焼いて、頭から尾まで、食べるのが礼儀である。単なる目刺なのだから、上品に食するようなものではない。腹の黒幕を取らないままだから、苦味を感じるが、それはそれで、十分美味しい。
 酒の肴だからかもしれぬが。

 味もさることながら、サヨリの焼いた香りが流れてくると嬉しいものである。
 酒の香りがさらに引き立つ。
 こんなところが、雅の伝統を重んじる日本海側に人気がある理由ではないかと睨んでいるのだが。

 --- 参照 ---
(1) 歌詞・楽曲 http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/sayori.html
(2) http://www.pref.kyoto.jp/kaiyo/9-encyclopedia/watch/sayori/sayori.html


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