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魚の話  2006年4月21日
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こんぶの話…

  晩年を とろとろおぼろ 昆布かな   小倉康雄(1)

 昆布の種類は多い。(2)
 しかし、そんなことに興味を覚えるのは、日本人と海藻研究者ぐらいのものだろう。
 小さい時から、昆布の旨みに慣れ親しんでいるから、どんな昆布があるか気になる人は多いのである。

 このため、ウエブには数多くの昆布の選び方が掲載されている。といっても、宣伝目的が多いが。
 そして、その解説が、様々なサイトで再掲されているようだ。
 従って、我田引水的な説明もありそうだ。

 とりあえず、ざっと眺めてみると、「長」 「三石(日高)」 「利尻」 「オニ(羅臼)」 「細目」 「真」が昆布の代表選手になっている。
 それでは、韓国・中国からの輸入品はどんな扱いになるのか気になるが、残念ながら、そんな解説を加える人は少ないようだ。
 ロシア産の話も聞かないが、魚に注力していて、昆布漁には余り熱心ではないのかも知れぬ。

 国内産で考えるなら、以下のように考えればよいのだろうか。素人発想だから、いい加減なものだが。

  寒流(親潮)の流域
   ・知床半島 [羅臼]---オニ昆布
   ・道南東部 [釧路、根室]---長昆布(棹前昆布:間引き品) と厚葉昆布
   ・道南中央部 [日高、十勝]---三石昆布
   ・宗谷岬周辺 [稚内、網走]---利尻昆布
  暖流(対馬海流)の流域
   ・宗谷岬周辺 [利尻・礼文島]---利尻昆布
   ・積丹半島の南北一帯---細目昆布
  暖流と寒流が混じりそうな地域
   ・渡島半島〜噴火湾 [函館]---真昆布
   ・下北半島〜三陸---真昆布

 ところで、これらの名称は産地で勝手につけた通称と思ったら、そうではなかった。古くからある言葉らしく、すべてが、「こんぶ科」「こんぶ属」の海藻名になっている。(3)

 但し、昆布の販売店に並ぶ、篭目昆布、猫足昆布(耳昆布)、ちがいそ、ややん昆布、茎長昆布、えぞわかめ(わかめ代用品)といったものになると、必ずしもそうではないようだ。

 ちなみに、「こんぶ属」には、先の種以外に以下の種が加わる。
  ちぢみ昆布、がっがら昆布、えなが昆布、からふと昆布、からふととろろ昆布、えんどう昆布、ごへい昆布

 さらに、「こんぶ科」に拡大すれば、属はかなりの数にのぼる。
  ちがいそ、あいぬわかめ属、わかめ属、つるも属、あなめ属、ねこあしこんぶ属、すじめ属、みすじこんぶ属、
  かじめ属、あらめ属、とろろこんぶ属、くろしおめ属、にせつるも属

 結構奥が深いものである。

 もっとも、沢山の種類を知ったところで、実生活にそう役に立つ訳ではなさそうだ。
 消費者が知りたい、美味しい昆布の見分け方や、価格の妥当性がわかる訳ではないからだ。というのは、促成栽培ものや、環境が悪い産もあり、種類以上に、質が大きく響くからである。しかも、良質な出汁昆布は、1年ほど上手に保存するとさらに旨みが増えるらしいから、管理も重要だ。

 そんな商品にもかかわらす、詳細な産地名や等級が記載されている商品には滅多にお目にかかれない。購入者に、価値推測の情報をを与えないのが業界の掟なのだろうか。

 昆布で最良とされるのは、名称からみて、「真」昆布なのだろうか。もちろん、出汁での話だが。
 もし、暖寒流が混ざる場所がよいのなら、次は宗谷岬辺りの利尻昆布ということになりそうだ。

 良質な昆布はえらく高価だが、優れた品質ならば、それだけの価値はある。出汁の旨みは天下一品だからである。そのまま頂くだけで、最高のご馳走になる。

 ところで、出汁のとりかたの解説を至るところで見かけるが、結構時間がかかる。労力をかけただけのことはあるだろうが、いかんせん出来上がった量が多すぎる。出汁の作りおきを避けるとなると、日々行うのは難しい。
 そう思っている人には、簡便な方法がお勧めである。邪道かもしれぬが、ほんの一手間で、結構美味しい出汁を味わうことができるのだ。

 出汁専用の急須を用意し、少量の昆布と良質の鰹節を一つまみ入れる。後は、お湯を注いで、一寸待つだけのこと。

 この程度の出汁でも、驚くほど素晴らしい。全く雑味を感じないからだろうか。一口含むと、頭の芯に染み渡る感じがする。
 日本人はアミノ酸無しでは生きていけないと、つくづく思ってしまう一瞬である。

 ・・・などと、大阪では話さない方がよいようだ。

 昆布の話をすると、すかさず、“東京の電話帳タウンページの目次に「昆布」があるか”と聞いてきたりする。調べてはいないが、そんなものかも知れない。
 大阪人にとって、昆布は特別なものなのだ。美味しい昆布は大阪に集まっているのかも知れない。

 そして、ひとしきり薀蓄を聞かされる。
 例えば、超薄切りの「とろろ昆布」は、堺の刃物職人が工夫してつくりあげた産物だとか。

 そんな時、“「とろろ昆布」という属があるが、製品名の「とろろ昆布」とは全く関係ないですな”と物知り顔をしない方が無難である。大阪の誇りを傷つけられたと思われかねないからである。

 --- 参照 ---
(1) お〜いお茶新俳句大賞 第九回 秀逸
  http://www.itoen.co.jp/new-haiku/09/syuuitu02.html
(2) http://www.kombu.or.jp/konbu.html
(3) http://www.net-report.jp/sorui/kisai_bunrui/moku_ryokuso2.htm


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