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魚の話 2006年6月9日 |
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たちうおの話…料るまで 太刀魚の銀 くもるなよ 中原道夫 [「銀化」主宰](1)太刀魚は、全国どこにでもいる魚である。旬は春から初夏とも聞くが、季語から言ってもやはり秋だ、と言う人も多い。 こうも違うのは、おそらく、産卵時期がまちまちで、何時でもどこかに旬の地域があるということだろう。 と言っても、太刀魚好きは西日本に集まっているようだ。長崎、山口・広島・愛媛、和歌山・三重の漁港が水揚げ量を誇っている。(1) 韓国にまで輸出しているというから、海を渡るとさらに大好き人間が増えるようだ。 この魚は、海底の泥のなかに棲んでいるらしいが、小魚の群れを目指して、底から浮上してくるそうだ。(3) その時、頭を上にしてしばらくまっすぐに立つのだという。輝く魚体を眺めれば、まさに太刀そのものである。どうして立つのか不思議な感じがするが、それ以外に攻撃方法が無いから致し方ないのだろう。 一瞬の隙を見計らって、突然、下から一匹に喰いついて、肉を噛み切るのである。動けなくなったところで、がぶ呑みにするのだ。 釣り人の説だが、鰯が大好物だという。従って、本格的に太刀魚釣りに挑戦するつもりなら、先ず鰯や鯖を釣って、それを餌に太刀魚を釣ることになるらしい。口ではそう言っても、おそらく、鰯か鯖を買っていくのだろうが。 東京で太刀魚釣りといえば、東京湾口の三浦半島観音崎沖の船釣りに人気があるようだ。(4)タチウオ釣り用のワイヤー仕掛け(2本鈎)でシャクるのがたまらないのだとか。 釣り人の話は面白くて調子が良いから、つい挑戦したくなるが、よく考えた方がよい。実態は、結構ハードなのである。 魚体が思った以上に重い上に、水面で必ず暴れるからだ。 しかも、その格闘の後が恐ろしい。なにせ、ワイヤーでも一瞬にして噛み切る力がある魚だ。気軽に鈎を外す訳にはいかない。油断すれば、指がなくなる。 と言って、足で押さえたりすれば、美しい銀色が台無しになってしまう。初心者ができる釣りではない。 緊張して、どうやら鈎を外したからといって、気を抜くとえらい事になる。息の根を止めておかないと、最後のあがきで突然暴れまくる。ここで噛み付かれたらたまらん。 恐ろしい釣りである。 素人を誘う釣り船もあるが、おそらく、船頭さんがやってくれるのだろう。 しかし、いくら美味しくても、この魚は、東京で人気沸騰ということはなさそうな気がする。 素っ頓狂な穴子のような顔は愛されるが、鋭い歯が見えて、いかにも獰猛で、悪漢の顔つきは、粋を愛する江戸前の職人には余り好かれないのではなかろうか。 --- 参照 --- (1) 句集「不覺」角川書店 2003年 (2) http://www.jfa.maff.go.jp/gyokogyojo/gyosyu/h15/content.html (3) http://www.shunmaga.jp/zukan/gyokairui/tachiuo/tachiuo.htm (4) http://www.tv-tokyo.co.jp/tsuri/database/html/040911.html 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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