トップ頁へ>>>
魚の話  2006年6月16日
「魚」の目次へ>>>
 


さくら貝の話…


  美しき 桜貝一つ
  去りゆける 君にささげむ
  この貝は ・・・
    さくら貝の歌 [土屋花情作詞・八洲秀章作曲・山田耕筰編曲](1)

Photo by STARDUST BOX (C) kobune >>>

 1949年、ラジオから流れ始めた歌である。
 逗子町役場に勤めていた土屋花情が、逗子海岸で桜貝を拾った情景を唄ったそうである。

 情景は大きく変わったが、桜貝拾いは今でも続いている。逗子のお隣の、鎌倉でも、LIGHT PINK◆◆の貝殻を見つけることができる。
 逗子の「さくら貝の歌」の歌碑を眺めるのもよいが、七里ヶ浜散策の方が、情緒をさそうかもしれぬ。

  桜貝 七里ヶ浜に バレエの碑  柿沼盟子 「風土」

 バレエの碑を知る人は少ないかも知れないが、ここ七里ヶ浜は、日本のバレエ発祥の地だ。パブロワのバレエスタジオがあったのである。(2)
 今は私邸だが、桜貝色の光輝くサテンのトゥシューズを履いたバレリーナがポワント(つま先立ち)の練習に励んでいたホールがある筈だ。おそらく、ロシア貴族が愛していた文化の香りがする家だと思う。

 もっとも、こうした大人の文化は弱まっているような気がする。淡いピンク色を基調とした服飾コーディネートは滅多に見かけない。時たま、ライト サーモン◆◆が使われる程度だ。

 ライト・ピンクは、“お姫様好み”の幼児色とされているようだ。
 こうなると、働く女性は敬遠せざるを得なくなる。お蔭で、桜貝の淡いピンク色が日常の場面から消え始めている。残念なことだ。

 せっかくの「海からの贈りもの」(3)なのに。

 --- 参照 ---
(1) http://www.duarbo.jp/versoj/v-folksong/sakuragai.htm
(2) http://www.j-b-a.or.jp/pavlova.html
(3) 児童文学書: 安房直子「だれにも見えないベランダ」 講談社文庫 1981年, 所収
  自然主義あるいは舶来政治思想の影響が強い日本の児童文学のなかで、ファンタジー中心の安房直子作品は貴重である。
  日本人独特の色彩感が豊富なのも、特筆ものだと思う。
  多作な作家(1943〜1993)だが、逝去後は次々と絶版化が進んでいる。これも、又、残念なことだ。
  [粗筋]
  かな子は、なけなしの僅かなおこづかいを持って、海の町のお祭りにでかける。
  そこで、海ばあさん達に騙され、桜貝の貝殻を買わされてしまう。
  この貝殻は、実はおはじきゲームのチップなのである。
  そして、おはじき大会でまきあげられてしまう。実に不条理な世界である。


 「魚」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2006 RandDManagement.com