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魚の話  2006年9月22日
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やつめうなぎの話…

  東風のなか 手応へ重き 八ッ目どう   香雪(1)

 「八ッ目どう」とは、八ッ目鰻を捕らえる漁具である。川底に沈めておく籠のようなものである。茅とか竹で筒状に編んであり、八ッ目鰻が中に入ると、出られなくなる仕掛けである。
 何処に沈めるのかが勝負の漁である。
 そんな用具がある位だから、昔は、そこらじゅうの川で沢山獲れた。長さ50cmもあり、結構大きな生き物だから結構食べでがあったと思う。この大きさのヤツメは「カワヤツメ」という名前である。

 例えば、秋田の雄物川では、冬をむかえる季節になると、八ッ目を味わうのが当たり前だったようである。(2)

 ところが、今や希少種扱い。

 江別漁協によれば、漁獲量が、1986年の72トンから、2002年の3トンへと激減(3)したそうだ。他の地域でも同じようなものだろう。養殖できる種ではないからだ。
 「江別八ツ目うなぎ祭り」の復活も見込み薄な感じがする。 (4)

 八ッ目鰻と言えば、東京では、浅草の蒲焼きのお店(5)が有名である。昔は、浅草に遊びに行くと、目に効くぞということで、子供に食べさせた親が多かったからではないだろうか。

 この八ッ目の蒲焼きだが、シコシコ、あるいはコリコリしており、鰻とは食感が全く違う。江戸の鰻は蒸しており、柔らかいということもあるが、八ッ目は「魚」ではないから当然だと思う。

 なにせ、魚と違って背骨が無い。鰻のように裂くことはできないから、包丁さばきは難しいらしい。
 そして、餌を砕く顎も無い。噛めないから、口を魚に直接当て、その体液を吸うのだという。なにか恐ろしげな食餌シーンを想像してしまう。
 そんな大きな違いはあるものの、生活は鮭と似ていて、川で産卵し、孵化後しばらく川で過ごしてから海に降りて成長し、2〜3年後に戻ってくるそうだ。(6)

 と言うことは、川の流れをよくしすぎて、澱みの泥がなくなり、孵化後に生活する場所がなくなってきたということだろう。
 と言って、今から、川を元に戻すことなどできまい。残念ながら、八ッ目鰻は日本の川から消え行く運命にあると言えそうだ。

 しかし、それでは寂しい。
 そこで、ゲーム(7)の登場動物として残ることになりそうである。

 --- 参照 ---
(1) 「掲示俳句」第109回[2006.5.1] 「どう」は原文では漢字表記
  http://www.asint.jp/~fuchi/keijihaiku109.html
(2) http://www.akitafan.com/cooking/21.html
(3) http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/kikaku/025/45.htm
(4) http://www.hokuhoku.ne.jp/ebetsu/kankoannai/event/event03.html
  “毎年4月に江別市コミュニティセンターで江別漁業協同組合が主催しておりまし た江別八ツ目うなぎ祭りは、
  八ツ目うなぎの漁獲量減少により、平成14年から漁獲量が回復するまでの間休止いたします。”
  http://www.hokuhoku.ne.jp/ebetsu/new/new.html
(5) http://www.yatsume.co.jp/kabayaki.htm
(6) http://www.city.chitose.hokkaido.jp/tourist/salmon/mado/fishlamprey1.html
(7) 「ざぶん動物ゲーム」 http://www.zabun.jp/game/game02.html

 --- 附記 [分類] ---
ヤツメウナギは骨が石化しないから、化石はなかなかみつからないそうだ。
ところが、中国で、白亜紀の地層から化石発見とのレターが2006年のNatureに掲載された。
これによると、現生と化石がほとんど変わらないという。進化が止まった訳だ。
M. Chang, et.al. “A lamprey from the Cretaceous Jehol biota of China” Nature 2006
http://www.nature.com/nature/journal/v441/n7096/abs/nature04730.html?lang=en


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