トップ頁へ>>>
魚の話  2006年11月10日
「魚」の目次へ>>>
 


うみうしの話…

 ウミウシの 角に渚が 牙をむく  現代俳句協会インターネット俳句会投句平成13年5月(1)

 ウミウシと聞くと、ヒドロゾアほどではないにしても、マイナーでほとんど関心をひかない生物と思っていた。

 と言うのは、ウミウシの図鑑といえば、「相模湾産後鰓類図譜」だったからである。後鰓類とは、ウミウシのことだが、おそらく、これ以上詳細に整理したものは出そうにない、労作である。しかも、美しいカラー図鑑。高校生の頃、とても欲しかった覚えがある。
 誰が考えても、読む人がいるのか危ぶむような本だが、特殊な出版社から発刊された本ではない。岩波書店である。
 勘のよい方なら、すぐわかるかもしれぬ。生物学御研究所編纂本である。

 昔は、一部の人だけしか興味をもてない類の生物だった。
 それこそ、磯で疲れて休んでいると、そばにいたりする輩である。すると、たまにのそのそ動いたりすることもある。そこで、ちょっと指でつっついたりしていじめると、変てこな色の液体を出して怒る。憎めない生物である。
 流石に、誰も食べようとは思わないだろうから、無視されっぱなしである。

 これが、近年、様変わりした。
 ウミウシ君、人気沸騰である。
 今や、海のアイドルと言ってよいだろう。

 ウミウシ本の売れ行きも好調のようである。海の図鑑と言えば、先ずは、魚だったのだが、異端児が持て囃される時代になったのである。

  ・小野篤司「ウミウシガイドブック 沖縄・慶良間諸島の海から」 TBSブリタニカ 1999年
  ・平野義明「ウミウシ学―海の宝石、その謎を探る 」 東海大学出版会 2000年
  ・鈴木敬宇「ウミウシガイドブック〈2〉 伊豆半島の海から」 TBSブリタニカ 2000年
  ・小野篤司「ウミウシコレクション POST CARD BOOK」 TBSブリタニカ2001年
  ・殿塚孝昌「ウミウシガイドブック〈3〉 バリとインドネシアの海から」 阪急コミュニケーションズ 2003年
  ・小野篤司「沖縄のウミウシ―沖縄本島から八重山諸島まで 」ラトルズ 2004年
  ・中野理枝「本州のウミウシ―北海道から奄美大島まで」ラトルズ 2004年
  ・F.E. Wells & C.W. Bryce「Sea Slugs of Western Australia」Sea Challengers 1996年

 確かに、写真を見ているだけでも楽しい。

 しかも、白妙の衣干したり、・・・のシロタエ イロウミウシと命名されている高貴な方もいる。
 もっとも、“ヒラヒラの下”に“キバみたいなものが生えてて凶悪な顔”らしいが。(2)

 実に面白い。

 ここまで人気が出たのは、スキューバ・ダイビング人口が増えたお蔭である。
 形、色、模様が様々なので、海で出会った瞬間、心がときめくらしい。

 それに、この生物は偏食で、それぞれ決まった餌しか受け付けないから、飼うのが極めて難しい。そのため、水族館では、とりどりの色のウミウシを見ることができない。陸で注目する人はいない訳だ。
 ところが、いざ海にもぐってみると、美しいウミウシ君がそこらじゅうにいる。余りの美しさに息をのむことになる。しかも、逃げることもない。じっくり眺めながら写真撮影をして、家に帰ってその余韻を楽しむことになる。
 当然ながら、又、海に行きたくなる。

 その程度ですむとは限らない。
 umiushiサイトを管理運営されているご夫妻はその典型。

 いつか日本の南の島で生活したいと考えていたが、それなら、ウミウシの海でなければと思うようになる。
 35歳を超えた頃、このままだと夢で終わりかねない、と気付く。そして、2003年12月、ついに島へ移住。

 「奄美大島への定住 = ウミウシ三昧の日々」(3)という訳である。

 --- 参照 ---
(1) http://www.gendaihaiku.gr.jp/haikukai/result/02_touku.htm
(2) http://www.izuzuki.com/Zukan/Slug/iro/shirotaeIUU.html
(3) http://www.umiushi.info/index.html [500種ほどが眺められる.]
 

 「魚」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2006 RandDManagement.com