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魚の話  2006年12月1日
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まながつおの話…


 真魚鰹 ため息漏らす おちょぼ口   駄作につき 詠み人知らせず

 マナガツオを、早とちりして、鰹と間違えて注文する人はいないかも知れないが、それにしても格好が違いすぎる。

 全体が平べったい菱形で、これに二股になっている尾鰭がつく。すこし丸くなっている角に、おちょぼ口がついており、そのすぐ側に小さな目がある。
 流線型のスマートな鰹とは正反対である。
 関西お笑い芸人的な感じがすると言ったら、失礼すぎるか。

 どうしてこんな名前にするのか、昔から合点がいかなかった。

 調べてみると、なんと、正真正銘の堅魚ということで、「京」で名付けられたという。(1)
 新鮮な鰹が手に入らないから、負け惜しみかと思ったら、今でも、京都では懐石料理に好んで用いられる高級魚だとか。
 そういえば、5月大歌舞伎「團菊祭」で、病気から復帰した団十郎による、歌舞伎十八番「外郎売(ういろううり)」の長台詞が評判を呼んだが、ここにも“京の生鱈、奈良生真名鰹”(2)がでてくる。

 う〜む。「真名」が気になる。

 ひょっとすると、「真名」は「堅」にかかるのではなく、「魚」かもしれぬ。そうなると、ただならぬ魚かも。鯉、真鯛と同じか、それ以上に格式が高い可能性もある。

 東京では、魚屋に並んでいるのを見かけるとはいえ、西京漬けで登場する魚という印象が強い。是非とも食べたいという人も少ないようで、人気ある魚という感じはしない。
 高級魚と言われると、意外な感じがする。

 高級とされるのは、海から遠い京都の人達にしてみれば、金属光沢を放つスベスベ肌の魚がことのほか嬉しかったからかな、と想像したが、違うようだ。
 もともと鱗がある魚だが、運ぶ途中でほとんど剥げ落ちてしまうそうだ。
 従って、鱗付きは高級品になる。

 言われてみれば、鱗付きなど食べたことがない。
 もっとも人気がでると、資源の方が心配だから、その程度の方がよさそうだが。

 東シナ海底びき網漁業で獲れる底魚の資源調査によると、最盛期には、マナガツオ類は12,000トンだったそうだが、2000年は8.6トンだという。(3)一瞬、誤植ではなかろうかと思ったが、グラフの縦軸が対数なので、その通りなのだろう。日本人と中国人のどちらの胃袋が凄いのかわからぬが、激減ぶりには驚く。

 魚屋さんに聞くと、今は、インド洋で獲れるのではないかというが、まあ、日本人のことだから、懐石料理に使いたいとの要望があれば、どこからか探してもってくるに違いない。
 ともあれ、南から持ってくるのは確かなようだから、旬が通用しなくなっていることは間違いなさそうだ。

 ところで、個人的には、この魚は、姿蒸し料理が合うと思う。
 和食より、中華ということである。

 但し、家庭で真似するのは止めた方がよい。魚の鮮度の問題ではなく、蒸し加減が難しくて、一寸の差で味が激変するからだ。
 自信がある人は別だが、やはり、プロの“清蒸”(4)を味わうべきである。

 それに、マナガツオの字は魚偏に昌だから、いかにも、中華料理向きな字体であるし。

 --- 参照 ---
(1) http://www.shunmaga.jp/zukan/gyokairui/managatsuo/managatsuo.htm
(2) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E9%83%8E%E5%A3%B2
(3) http://abchan.job.affrc.go.jp/digests13/1374.pdf
(4) 一例:http://www.cookingroom.com/joyful/jjie.php?ddl=376&cdd=


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