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魚の話 2006年12月8日 |
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ほたて貝の話…帆立貝 料理の腕に 気づいてよ この美味しさは, 材料の良さなのか, それとも腕なのか. 帆立貝といえば、どうしても、ANA機内プログラムで聴いた立川志の輔師匠の創作落語「はんどたおる(1)」を思い出してしまう。 大声で笑いそうになるのを堪えるのが難しい、傑作である。 もっとも、ホタテがでてくるのは枕で、本編ではないが。春になると、ホタテガイが、ある夜に一斉に海の上に浮上し、殻を開いて帆にして走るという北海道の人の話である。 冗談として聴いてしまうが、この話、意外と本質をついているかもしれない。 ともかく、一斉に遠距離移動する貝だからである。 大漁と喜んでいると、突然、全くいなくなることは、昔から知られており、その移動距離は一寸やそっとのものではないのだ。 ヒトデがやってくると、殻を閉じることで噴流を発生させ、1〜2mを飛ぶようにして逃げることはよく知られているが、あくまでも、その場の緊急避難でしかない。一斉に遠距離を旅する際も、同じ方法を駆使するとは考えにくい。 と言って、帆で風を受けて移動するとは思えないが、海流に乗る方法を身につけていることは確かなのである。 そして、とんでもないと言うか、信じがたい目撃談もある。 「片方の殻を立てて海面に浮上し、風を受けて沖へと帆走・・・貝と貝とがぶつかりあって異様な音をたてて」(2)というのだが。 立川志の輔師匠ではないが、実に楽しい話である。 一方、欧州では、全く違った感覚でホタテ貝を眺めるようだ。 ギリシア神話の世界では、女神Aphrodite は海の泡から生まれる。その話を題材にしたのが、誰でもが知っている、Botticelli (1445〜1510)作「ビーナスの誕生(3)」だ。 この絵には、シャコ貝並みの巨大ホタテ貝が描かれている。ホタテ貝は女性を象徴する貝なのだろう。 しかし、そう単純に見る訳にもいかないのである。 Santiago巡礼では、ホタテ貝が重要な意味を持つからだ。聖ヤコブ(Saint-Jacques = Saint James = Santiago(4))の遺体がスペインに流れ着いた際の話にホタテ貝が登場するからである。 聖ヤコブとホタテが出てくれば、勘が良い方なら、貝殻を皿がわりにしてオーブン焼きするコキール料理を想い浮かべると思う。 その通り。 “coquille Saint-Jacques”(5)は、ここから来ているのである。 コキールは楽しいが、日本では、家庭でのオーブン料理は余り人気がないようだ。 その場合は、オリーブ・オイルやバターのソテーがお勧めである。前者なら塩胡椒+レモン汁のさっぱり味が合うし、後者なら微塵切り大蒜を加えると抜群だ。 こんな料理が家庭で簡単にできるようになったのは、生ホタテが一年中食べられるようになったからだと思う。 それはそれで嬉しいが、やはり12月に入ってからのホタテは違う。甘みが出てくるからだ。 旬を楽しみたいのなら、なんといっても天然ものと言う人がいるが、天然もの[地撒]と言っても、放流された稚貝が育ったもの。養殖[籠(6)に入れて“垂下”]ものと、たいした違いはないと思うのだが。 などと言うとすぐに反論を浴びる。大事に育てられると、なんの危険にも直面せず、ボーとして育つ。そんな輩が身が締まっている筈はないというのである。 確かにそんなものかもしれぬ。 --- 参照 --- (1) 試聴: “ホタテの海渡り・・・”http://www.sonymusic.co.jp/Music/Arch/SR/ShinosukeTatekawa/SICL-38/index.html (2) 中村幸昭「マグロは時速160キロで泳ぐ―ふしぎな海の博物誌」 PHP文庫 http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=4-569-56945-5 (3) Sandro Botticelli 「The Birth of Venus」 [Uffizi Gallery, Florence] http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Sandro_Botticelli_046.jpg http://en.wikipedia.org/wiki/The_Birth_of_Venus_(Botticelli) (4) http://www.red2000.com/spain/santiago/history.html (5) http://www.shibatashoten.co.jp/modules/xwords/entry.php?entryID=734 (6) http://www.net.pref.aomori.jp/gyogyosikai/images/tousei_illust.gif (カット) 「NOM's FOODS iLLUSTRATED」 (C) Hitoshi Nomura http://homepage1.nifty.com/NOM/index.htm 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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