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魚の話 2006年12月15日 |
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かいめんの話…すぐ乾く 君の頭は 海綿か 吸収だけ速いスポンジ頭が増えているようだ. 海綿は、磯の生き物という感覚で見ていたが、最近訪れた水族館では、深海の生物として展示されていた。 これは「動物」です、との教育話付きだが、華やかさがないから子供もさっぱり寄り付かないようで、じっと見ているのは筆者位のものである。 ただ、最近は柔らかな化粧用スポンジが大人気のようだから、上手に宣伝すれば、女性方の関心を引くかもしれない。 天然スポンジは、濡らすまではかなり固いが、濡らして使っていると柔らかになる。不思議な材質であり、欲しくなるのも無理はない。 しかし、余りの人気で、エーゲ海産の価格は高騰したままのようである。なにせ、ギリシア土産がフロリダ産だったりするという。 photo → 「Bath Sponge」 (C) Animal Biology Dept., University of Central Oklahoma 化粧用スポンジに縁遠い生活をしている人でも、エーゲ海産海綿の素晴らしさは、知っている筈だ。 「BOY ON A DOLPHIN」の音楽を流せば、その記憶が戻るだろう。そう、映画の「島の女」である。エーゲ海の海綿採りの海女のお話だが、筋は結構陳腐で、美しい景色と生活感溢れるソフィア・ローレンでもっている映画だった。 日本でイルカ人気など考えられない時代だったから、日本語の題名を変えた理由がよくわかる。 もっとも、我々がよく見かける海綿は加工スポンジだから綺麗に感じるのであって、海辺を歩いていて見かける海綿は邪魔者に近い。 “「やあ、気味が悪いなあ。土左衛門の足かと思った。」 それは半ば砂に埋まった遊泳靴の片っぽだった。そこには又海艸の中に大きい海綿もころがっていた。”(1) ・・・と言ったところが実感だろう。 良く言う「海綿」とは、網しか残っていない死骸だ。しかし、生きている海綿も、そう大きく違うものでもない。小さな孔と溝しか持っていないからだ。この溝に流れ込む海水に含まれるプランクトンを獲って生活しているのである。 多細胞生物ではあるが、組織の機能分化はほとんど無い。そのため、外から力を加えたりすると、体はバラバラになってしまう。しかし、そうなっても、各細胞は生き伸びるのだと。そうこうするうち、再び、細胞が集まって一個体になるというから凄い。 要するに、原始の世界での営みを保っている訳だ。 太古の昔から、ほとんど、進化らしい進化をせずに、生き延びたことになる。とは言え、それなりに種は増やしたようだ。(2) 所謂、スポンジになる海綿はほんの一部なのである。 生息域は、熱帯が多いが、世界中のどこでもといった印象だから、生命力は抜群なのだろう。 このような生物は、知られていない底力がありそう、と感じる人は少なくない。 現実に、世界のそこかしこで、創薬研究の対象となっている。 素人が考えても、特殊ステロイドを上手く利用できればすぐに制癌剤になりそうに思う。だが、よく考えれば、試験管で効能が見つけたからと言って、簡単にヒトに使える薬にはならないのだが。期待のかけすぎは禁物である。(2) ただ、HIV治療薬のAZTやDDIも、海綿由来核酸からのアナロジーとの話も聞く。結構、特殊なものをお持ちのようである。 ヒトは、これからも、海綿君には、お世話になり続けることになりそうである。 --- 参照 --- (1) 芥川龍之介『蜃気楼―或は「続海のほとり」―』 http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/147_15135.html (2) 科学博物館所蔵「星野孝治博士の海綿コレクション(広島大学理学部附属向島臨海実験所)」は1100点もの標本があるそうだ. http://research.kahaku.go.jp/department/zoology/collection/kaimen.html (3) 例:“Rock pool sponge may fight cancer” http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/4282654.stm 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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