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魚の話 2007年1月5日 +追記 |
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おうむがいの話…名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 貝殻ひとつ 思いやる5億年前の月日オウムガイは、熱帯、それも西太平洋の深さ数百m辺りを棲家にしているそうだ。死ぬと、貝殻が海面まで浮き上がってくるそうである。 形態は巻貝型だが、貝のなかは、穴は奥までつながっておらず、仕切りができていて空洞になっている。従って、体の重みがなくなれば浮力が効いて浮き上がってしまう。 そのため、貝殻だけが、黒潮に乗って、はるばる日本までやってくる訳だ。 貝殻があるし、貝らしき名前もついているが、頭足類でイカやタコと同類である。と言っても、似ているとも思えないが。 もっとも、中身がタコの巻貝もある。 こちらは、純白の上、薄くて半透明である。美しい。 オウムガイの形状とは一寸違うが、よく似ている。貝殻を二枚あわせると葵の葉に似ているので、アオイガイと名前がついたそうだ。海の表層で生活しているようで、浮いたり沈んだりする必要がないため、貝殻には隔壁が無い。 オウムガイ同様、貝殻が漂着するそうだ。死んでからの漂流ではなく、生きたままで寒い日本海側に入り死んでしまうらしい。(1) オウムガイを可愛いと言う人もいるようだが、水族館で見ると、目が不気味な感じがする。さらに、足を出し始めると、これが矢鱈に多くて、怪物のようだ。 この動物のすごさは、何と言っても、化石のアンモナイトと瓜二つである点。 後から分岐した種のアンモナイトに覇権を奪われたが、そちらは絶滅。一方、オウムガイは、しぶとく生き延びて、5億年前の姿を保っている。なにせ、魚や恐竜がいなかったころに登場した種なのだから恐れ入る。 オウムガイのムービー 「アンモナイトの美と科学」 (C) 国立科学博物館>>> 単に、古い種というだけならそれほど驚かないが、その機能が素晴らしいのである。 タコのような動きに加えて、100m〜600m 間を、浮力調節をすることで、自由に深度を変えることができるのだ。 「In Search of NAUTILUS」(2)には、その方法が解説されているが、すごい機構である。 5億年前は、この仕組みで他の種を圧倒していたのだ。 Dr. P. Ward: “Up From Deep: The Nautilus and Secrets of the Ancient Oceans” [Video: Ward dives at night in search of the elusive nautilus] (C) Sea Studios Foundation >>> これほどすごい生物だから、貝殻の形状も完璧だろうと踏んで、ここに黄金比が潜んでいると解説する人もいるようだ。(3)こうなると、サイエンスと言うより、ロマンか宗教の世界である。 美しい形状の生物は、生き延びることができるとでも言いたそうだ。 オウムガイの価値は、どうして生き延びれたのか、考えさせてくれることにあると思うのだが。 --- 参照 --- (1) http://www.kaikyokan.com/cgi/fish0/165.htm (2) Peter Douglas Ward 著 小畠郁生監訳「オウムガイの謎」 河出書房新社 1995年 (同一タイトル本:小畠郁生・加藤秀著, 筑摩書房 1987年) (3) “植物や動物だって数学者”『秋山仁先生のジンジンに感じる数学』 http://www.ntv.co.jp/sekaju/student/20050528/02_0301.html 【追記】 山口正士 先生から頂戴したコメントより [2007.1.5] “オウムガイとカイダコは、系統的にかけ離れている動物ですので、 一緒の話に混ぜてしまうことは誤解を招くかもしれません。 Ward のオウムガイの話の本はよく書けていて楽しめます。彼が書いた他の数多くの著書も面白く読めます。彼には文才がありますね。 特に、モササウルスの歯型と誤認された、貝の付着痕のエピソードがよかったと思います。生きているオウムガイを追いかけて、捕獲したもので破壊実験をしたり、かつての「お話」の空想世界だった古生物学をサイエンス、実証科学に引き上げているところが印象的でした。 日本海の沿岸に冬の時化で打ちあがるカイダコの殻、アオイガイについては、玄界灘の熱心なビーチコーマーがHPを持っています。 (http://www1.bbiq.jp/mitomabeach/) このタコは謎だらけです。” 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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