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魚の話  2007年3月23日
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ゆむし の話…

  のびのびと  動くゆむしに  目をこらす  ふと 進化の流れを想う

 “ユムシとは伸縮自在の海の虫”(1)である。短くして太らせたミミズのような体型。そのため、とても食材には見えないが、韓国の市場では普通に売られていて、皆喜んで生で食べるそうだ。香辛料が加われば、小さなウインナソーセージとたいしてかわらぬのかも知れない。
 韓国料理は人気があるが、これだけは、ミミズイメージの気味悪さがぬぐえないから、この心理的な壁を突破して食べる日本人は少ないと思う。

 もっとも、日本でも、北海道の浜益村のように、特産品になっている地域はある。しかし、そこでも知る人ぞ知る珍味らしい。(2)

 実は、ユムシは珍しい生物ではない。自称クロダイ釣り師達は、一匹100〜150円を払って、釣り餌として使っている。大物が釣れると信じているから、100円で数千円の魚が獲れるとほくそえんで購入するのだ。だが、食材価格として考えると、小指ほどの大きさにもかかわらずこのお値段だから、結構高価な商品である。その結果か、国産品入手難なのか、理由はわからぬが、小振りで若干安価な輸入品も手に入る。しかし、それでも安価とは言い難いが。

 まあ、釣りマニアにはよく知られているとはいえ、マイナーな生物ではある。
だからと言って、昔からそうだったとは限らない。なにせ、虫偏に益の旧字という、立派な漢字があてられているからだ。
 昔は、干潟や浅い砂地などそこらじゅうにあり、棲家には不自由しなかったから、膨大な数のユムシがいた筈である。その頃は、益になる貝類と見なされていたのではなかろうか。その後、そんな環境は失われ、ユムシは忘れ去られたのだと思う。今では、沖合いの砂地で暮らすユムシ君が多いのだろう。そのお蔭で、海が荒れたりすると浜に大量に打ち上げられる時もある。それが、浜益村の珍味になると想像しているのだが。

 それにしても、面白い体型の動物である。(3)眺めていると、自然に進化の流れが見えてくる。

 この動物、感覚器官や脳は無いが、神経系は持っている。神経は、体を伸縮させたりして動くことと、餌を集めて食べることの2つに集中して力を発揮しているのだ。
 海中をゆらゆら浮かぶ動物達は複雑な構造に見えるが、上下があるだけ。一方、ユムシは単純な生物に見えるが、ずっと進歩している。自ら動いているからだ。つまり、体が進む方向があるため、体に前後が生まれている。上下と前後の区別があれば、左右感覚は自動的に生まれて来ると思う。
 ユムシは、砂地に棲んでいるので、左右感は不要だ。そのため環状になっていると言えそうだ。おそらく、砂地から離れれば、動き易いように、左右の形状ができてくる。

 ちなみに、釣り針をかけるのは、後側、つまり尻である。
 前の方には口がある。
 よく眺めると、皮膚からとび出ている毛がある。これは、魚でいえば、鰭に当たる器官なのではないか。
 骨は無いし、目も無いから、得体の知れぬ生物に見えるが、実は魚の基本形を揃えている生物にも思える。

 だからと言って、がぜん親近感が湧いてくる訳ではないが。

 --- 参照 ---
(1) 山下欣二:「海の味 ─異色の食習慣探訪─」八坂書房1998年
(2) http://kita-totto.fishexp.pref.hokkaido.jp/totto/cgi-bin/v-combo.cgi?index=0103201&pid=12
(3) http://images.google.co.jp/images?svnum=10&hl=ja&inlang=ja&lr=&ie=Shift_JIS&q=%83%86%83%80%83V&btnG=Google%2B%8C%9F%8D%F5


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