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魚の話  2007年4月20日
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いとう の話…

 イトウには ブナの落ち葉が 良く似合う
   イトウという魚が養殖されている飼育槽に枯葉が舞っていた (十二湖にて)(1)

 2007年初頭、イトウの絶滅が間近に迫っていると、マスコミが一斉に報じた。

 「北海道レッドデータブック2001年」(2)で、絶滅の恐れがあると記載された魚であり、目新しい情報とはいえないが、IUCNの2006年版レッドリストの数値(3)を見たジャーナリストが驚いて報じたのかも知れない。

 確かに、推定値がとんでもない値だ。ロシアのことだから、そのまま受け取る訳にはいかないが、望み薄状態であることは確かそうだ。
  99% in Sakhalin
  98% in Khabarovsk
  57% in Hokkaido

 イトウとは超大型サケに当たるが、サケとは違って、「産卵後の斃死」はないそうだ。これが巨大化する理由だろう。
 巨大生物は絶滅する可能性が高いが、河川の餌がなくなっているとも思えないから、生き延びるチャンスはありそうだが、残念ながら産卵場所がなくなっているそうだ。これでは、手の打ちようがあるまい。(4)

 要するに、高年齢のイトウはまだ生活しているが、稚魚はすでにいないということ。絶滅は時間の問題ということだ。

 1960年代に、すでに“幻の魚”(5)と認定されていた魚だから、まあ、ここまでよく生き延びたと拍手を贈るしかあるまい。

 “カッと巨口をひらいたまま息をひきとりつつ肌の色がみるみる変っていく二尺五寸(七十五センチ)のイトウに、いいようのない恍惚と哀惜、そしてくっきりそれとわかる畏敬の念をおぼえる。”とくれば、“幻”を求めて数多くの釣り人が大挙して釧根原野を訪れるのは、当たり前。神秘な魚を求め、どこまでも探し回るのことになる。
 キャッチ&リリースなど、一部の話。美味しい魚という話が出回っているのだから。それに、リリースしたところで2割は病気で死ぬというのが常識。
 一人が1日で釣る量と、河に棲む数を考えれば、どうなるかは、算数ですぐわかる。
 それに、高額なイトウの剥製が出回っているのも、公然の秘密。マニア垂涎の魚なのだ。
 獲り尽くされるのは時間の問題ということ。こんなことは、ずっと前からわかっていた。

 しかし、イトウ保護はできない。
 河川の土木工事無くしては経済が成り立たない事情もあるが、漁業にとっても厄介者と見なされかねない魚だからである。
 先に述べたように、イトウとは、大型の鮭でもある。と言うことは、イトウはサケの競合相手。

 おそらく、漁業関係者は、イトウの商品化も図った筈である。しかし、イトウは野生そのものだったということではないか。
 そう思うのは、この魚の漢字が、魚偏に「鬼」だからである。気が荒いということだろう。
 もっとも、青森県鰺ヶ沢町 赤石水産漁業協同組合では養殖事業が成り立っているそうだが。(6)

 ともあれ、野生のイトウが辿る道は一つしかなさそうである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.jomon.ne.jp/~ja7bal/haiku.htm
(2) http://rdb.hokkaido-ies.go.jp/page/detail1.asp?spc=000000000000000000621
(3) http://www.iucnredlist.org/search/details.php/61333/summ
(4) http://homepage3.nifty.com/huchen/Obirame/reports/zatsugaku.html
(5) 開高健「私の釣魚大全」文藝春秋 1969年
  http://kaiko.jp/kinenkan/exh2006-fish/01.html
(6) “サハリン生まれ鰺ヶ沢育ちの魚イトウ” [2002.4.25]
  http://www.ajigasawa.net.pref.aomori.jp/page/fmailbacknum/1-50/fmail-2002-05-09.html


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