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魚の話 2008年1月11日 |
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にしん の話…数の子に 老いの歯茎を 鳴らしけり 虚子 1954年 お節料理とは、節目毎に(1月1日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日)、祈願の気持ちを込めて、神様と一緒になって頂くもの。 しかし、もう、正月しか登場しないようである。桃と菖蒲の節句は子供達が喜びそうなご馳走を振舞うのが普通だし、七夕料理はほとんど聞いたことがない。重陽に至っては、その日を意識する人がいなくなってしまった。 豊作と大漁を感謝することがなくなってしまった、ということかも知れない。 そのなかで正月料理だけは、豪華さが追求されているようだが、本来は、御餅と、大豆(黒豆)、ニシンの卵(数の子)、カタクチイワシ(ごまめ)、の3品があれば十分だった筈である。餅は特別だが、それ以外は、日持ちがよい乾物で、大量に供給される山海の産物を使ったということだろう。それでも、餅と一緒に食べることで、大盤振る舞い感を与えたのである。 しかし、今や、丹波黒豆や北海道産数の子は高級品と化した。もっとも、黒豆なら、需要さえあれば大量栽培で安くすることもできようが、鰊の方はそうはいかない。 獲れなくなればお手上げである。 と言っても、子持ち昆布で知られるように、ニシンの産卵シーンはわかっており、板状の孵化盆を使った孵化技術が完成しているので、養殖への挑戦はかなり前から行われている。(1)要するに、稚魚放流なら、お金さえかければ難しくないのである。そこで、各地で、毎年放流されているのだが、その結果はかんばしくない。(2) すでに、日本のニシン漁業はニッチビジネス化してしまったようだ。 そこまでして食べる魚でもないような気がするが。
ニシンの生態は結構わかってきたと思っていたが、そうではないということ。 もともと、この魚、ただならない漁獲量変動で有名である。その産卵数は天文学的数字だろうから、おそらく、数百万匹の稚魚を放流したからといって、どうにかなるというものではなかろう。 他の魚と同じ発想の栽培漁業では復活は無理ということである。
要するに、亜寒帯の海での爆発的な栄養分増殖に対応して生きる魚だから、こうした状況が海で発生しない限り、さっぱり獲れないのだ。(5) 暖かい地域の海のように、栄養分の季節・経年変化が穏やかな地域で生きている魚に向いた養殖方法では、湾内での少量生育しかできないということ。 億尾レベルの稚魚放流を数年続け、産卵場の海藻を増やし、少量水揚げ年の徹底した漁獲規制をしない限り、まともな鰊漁業は復活しないということだろう。 --- 参照 --- (1) 「ニシン放流事業」留萌水産物加工協同組合 http://www15.ocn.ne.jp/%7Erumoi-sk/horyu.html (2) 「ニシンの稚魚調査から将来の豊凶を予測する」試験研究は今 NO.591 2007年 http://www.fishexp.pref.hokkaido.jp/SHIKENIMA/551TO600/591/591.htm 「風蓮湖産ニシンの現況(明日の豊漁を目指して)」試験研究は今 NO.398 1997年 http://www.fishexp.pref.hokkaido.jp/SHIKENIMA/351to400/398/398.htm (3) 「平成19年度資源評価票(ダイジェスト版) ニシン」 http://abchan.job.affrc.go.jp/digests19/html/1923.html (4) 「平成18年ニシン北海道・サハリン系群の資源評価」 http://abchan.job.affrc.go.jp/digests18/details/1823.pdf (5) 渡邊良朗,他: 「海の資源変動のしくみ−固体数変動様式の南北差の生物学−」DOBIS http://www.dobis.ori.u-tokyo.ac.jp/jimukyoku/13DOBIS/H13sample.pdf (参考) 「ニシン豆知識」「数の子知識」留萌水産物加工協同組合 http://www15.ocn.ne.jp/%7Erumoi-sk/nishin-mame.html http://www15.ocn.ne.jp/%7Erumoi-sk/mamechisiki.html (俳句の引用元) 上杉晴一郎 “俳句鑑賞・その八「高浜虚子」” http://homepage1.nifty.com/uesugisei/ikku8.htm (数の子のイラスト) (C) Hitoshi Nomura “NOM's FOODS iLLUSTRATED” http://homepage1.nifty.com/NOM/index.htm 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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