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魚の話 2008年2月29日 |
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みる の話…神風の 伊勢の海の 朝なぎに 来寄る深海松 夕なぎに 来寄る俣海松 深海松の 深めし我れを 俣海松の また行き帰り 妻と言はじとかも 思ほせる君 万葉集巻十三 3301 “海松喰い”の話をしたが、海藻のミルの方が気になってきた。 → 「みるくい 」 (2008年2月15日) ミルは色の名称になっているし、形状も面白いから文様(1)として結構使われている。 ただ、本来は、意匠用ではなく、れっきとした食用海藻である。(2) 古代は、ワカメとミルが藻食材の双璧だったと思われる。従って、海に感謝する藻刈神事はもっと一般的なものだったに違いない。 しかし、ミルは浅瀬の岩にへばりついていたりするから、素潜りでむしり採っていたのでは、余りに生産性が悪すぎる。 と言うことで、食材としては廃れて来たのだろう。 しかし、行事としての採取を続けている地方もあるようだ。逗子の小坪漁協は、新嘗祭に海松を献上しているという。お吸い物として使われるそうだ。(3) もっとも、伊勢神宮の月次祭に含まれていた“贄海の神事”(4)の方は、明治に入り廃止されたそうだ。 だが、ミル人気が落ちたのは、そればかりではなさそうである。 網で採るナマコ漁とバッティングするからだ。 ミルが大量繁殖すると、ナマコが上手く網に入らない上、両者の分別作業が大手間になるというのだ。(5) たしかに、これでは漁師はたまらぬ。 ところで、この海藻、日本原産だそうで、この亜種(Green Sea Finger)が北米大西洋岸で帰化して増えているという。 お陰で、ケルプの森が消えると問題化しているらしい。(6) 余程嫌われていると見え、“Dead Man's Fingers”という名称まで頂戴しているようだ。(7) --- 参照 --- (1) 例: 風俗博物館 144. 藤立涌海松文紙入(大正時代) http://www.iz2.or.jp/gyojibunka/kyutei10.html (2) 「延喜式」5(斎宮)・供新嘗料条[66]に“干海松二斤”とある. [神道・神社史料集成(国学院大学)] http://21coe.kokugakuin.ac.jp/db/jinja/000000d.html (3) 神奈川県水総研メルマガ 漁協紹介 [2003.11.28] http://www.agri.pref.kanagawa.jp/SUISOKEN/mailmag/no021.html (4) YAHOO!辞書[大辞泉] http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E8%B4%84&dtype=0&dname=0na&stype=0&pagenum=1&index=14494313949500 (5) “海藻ミル大繁殖、ナマコ漁打撃 七尾南湾 「冬の味覚」漁獲大幅減”北國新聞 「2007年11月22日] http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20071122101.htm (6) 田中次郎: 「帰化海藻」『21世紀初頭の藻学の現状』 日本藻類学会 (2002年) http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsp/pdf-files/45Introduced-Seaweed.pdf (7) “Introduced Species Summary Project Dead Man's Fingers (Codium fragile)” http://www.columbia.edu/itc/cerc/danoff-burg/invasion_bio/inv_spp_summ/Codium_fragile.html (万葉集出典) 巻十三 雑歌 http://etext.lib.virginia.edu/japanese/manyoshu/AnoMany.html (海松の丸文様) (C) 馬玉芳 “Nagisa Scope” >>> 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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