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魚の話  2008年3月21日
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てんぐさ の話…



  ところてん 煙のごとく 沈みをり  日野草城

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 テングサといえば寒天。バイオ研究者にはなくてはならない培地として有名だ。
 その成分はガラクトースとアンヒドロガラクトースが結合した高分子で、保水能力が極めて高い。この高分子、アガロースとアガロペクチンの2種に分かれ、後者だけがアンヒドロセルロースに硫酸基のような側鎖がついている。
 当然ながら、この側鎖の多さで食感は大きく変わる。原料海藻の産地で相当質が違うことになる訳だ。(1)

 それは実感としてもわかる。
 小生がトコロテンを始めて食べたのは、確か房総の宿でのこと。太くて弾力性があった。それが、一般品とは相当違うとに気付くまで、相当時間がかかった。
 甘味処では、トコロテンでなくアンミツを選んでしまうからである。

 まあ、一般人にとっては、寒天とは、アンミツ・トコロテン等の原料になる、半透明な白色の乾物イメージしか湧かないのが正直なところだ。
 言うまでもないが、寒天とは、天草を煮溶かした液を凍結乾燥したもの。使う時は、また煮溶かして冷まして固める訳だ。
 伝統食品だが、様々な技術が隠れており、それを活用することで、世界に冠たる研究開発型寒天メーカーも生まれた。(2)

 しかし、寒天にしなくても、天草を煮出した液から直接心太を作ることもできる。“生”食である。
 残念ながら、そんなものを出してくれるところは少ないが。

 尚、天草とは、テングサ科に属す様々な海藻を含んだ総称であり、寒天の主体はマクサ(真草)だが、それ以外も含まれていたりするそうである。見た目、かなり違う海藻だが煮ればわからないということだろう。[オニクサ,キヌクサ,オオブサ,ヒラクサ,オバクサ,ユイキリ](3)

 ただ、粉状寒天の原料はテングサではなく、オゴノリ(尾胡草)だという。
 加水分解技術が向上し、機械による圧搾脱水も可能になり、弾力性調整が簡単だから、当然かも知れない。
 それに、海外から安く調達できそうだし。チリが世界の6割を生産しており、インドネシア産は良質だという。(4)

 まあ、ヒトは結構、どんな海藻でも食べれる訳だ。
 実は、それは、訓練の賜物のようだ。
 アメフラシはアオサやワカメは好んで食べても、テングサ(マクサ)は嫌って吐き出すという。しかし、トレーニングすれば、好んで食べるようになるのだそうである。(5)

 --- 参照 ---
(1) 「寒天製造における原料海藻の・・・」  http://www.com.rd.pref.gifu.jp/~iri/h17/17_kanten.pdf
(2) 伊那食品工業(株)  http://www.kantenpp.co.jp/corpinfo/profile/gaiyo.html
(3) 伊豆・磯の生物博物館 紅藻網テングサ科 http://www003.upp.so-net.ne.jp/isohaku/0224tengusamoku.html
(4) 大野正夫: 「新しい海藻養殖」 日本藻類学会創立50周年記念出版
  http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsp/pdf-files/34SeaweedCultivation.pdf
(5) H18 東邦大学薬学部4年 長能彩美・松田絵巨 氏 http://www.phar.toho-u.ac.jp/labo/seibutsu_butsuri.html
(俳句の出典) インターネット俳句センター[水煙] 日野草城の俳句 秀句とその鑑賞
  http://www.suien.net/sojyo/kansyo.htm


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