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魚の話  2008年4月18日
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おいかわ の話…


 水底の 一枚岩や 柳鮠 虚子

 “ハヤとヤマベの川釣り”は昔から有名。特に釣り人が物音に神経質になっているからよくわかる。あ〜、あの釣りか、と気付く人も多かろう。
 ヤマベは関東での呼び名らしく、本名はオイカワ(追河)だという。聞いたことある名称だが、まさかヤマベのことは知らなかった。ちなみに、ハヤは漠然とした呼び方で、ウグイを指すことが多いという。
 それなら、関西ではオイカワかと思いきや、そうではない。琵琶湖では、ハエとか、ジャコと呼ばれているのだ。(1)

 一体どうなっているのだ。
 もしかすると、「追河」ではなく、京の「大井川」からきているのかも知れぬ。“京俗、呼びて乎井加波と曰ぶれり。”とされているからだ。(2)
 京都なら、その位のことはしそうだ。などと思うのは、京ことばに「さぎしらず」があるから。コレ、京名物、鮠(ハヤ、ハエ)の子の佃煮の名称。鉄道唱歌にも登場する加茂川産の京都みやげだったという。(3)もちろん、今は無いが。
 鷺が気付かないほどの小魚だという訳である。
 そんなこともあって、正式名がZakko(雑魚)になったのかも。実にそっけない呼称だが、シーボルトのお蔭だ。(4)

 だが、この魚、昔は、そんな地位ではなかった筈。なにせ、婚姻色が美しい。腹が赤色を帯びるから、神饌とされていたに違いない。まあ、勝手な想像だが。

 神饌はともかく、お洒落な魚であることは間違いない。それがわかったのは、「さぎしらず」の解説から。この魚が季語になっていると記載されていたからだ。
 実は、今の今まで、こんなことを知らなかった。名称は柳鮠(やなぎばえ)だ。
 柳が芽吹く頃、川を上って産卵し、夏にはその稚魚が下ってくる。おそらく、冬は河口の深みででも過ごすのだろう。そんな生態を踏まえた上での命名だと思われる。
 なかなか情緒ある言葉だ。

 もっとも、そんな生態だと、澄んだ渓流、浅瀬がある中流、植物が生える河口がすべて揃わないと生きていけないから、相当難儀していることだろう。

 --- 参照 ---
(1) こんどう たくみ: 「琵琶湖のおさかな」 http://www.biwa.ne.jp/~t-kondo/fish/oikawa.htm
(2) 和漢三才圖會 Yabtyan 書き下し及び注記 http://homepage2.nifty.com/onibi/wakan48.html
(3) 相馬大: “京ことば 「さぎしらず」” 鼓月 京ことば通信 [2001.9]
  http://www.kogetsu.com/kotoba/200109.html
(4) 「シーボルトと日本の水生動物」  http://www.geocities.jp/hahator/umi/siebold/sebold.htm
(俳句の出所と解説) 西東登: 「魚との語らい 釣って釣られて味わって」 カイガイ出版 1977年
  http://homepage3.nifty.com/jofiaichi/wakahaiku.htm
(オイカワの写真) [Wikipedia] Oikawa1.jpg http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Oikawa1.jpg


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