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魚の話  2008年6月6日
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とり貝 の話…


 父の忌に 鳥貝食べし 寝像佳し  赤尾兜子 「歳華集」 1974年

 三河湾では、2007年、トリガイの12年ぶりの豊漁で湧いたらしい。(1)2008年はどんな調子なのだろう。
 収穫量は毎年大変動ということは、最適な環境の幅が狭いということだろうか。水質が悪化すると生きていけないし、余りに水が澄んでしまえば餌が足りない。条件次第で、豊漁にも不漁にもなる訳だ。
 もし、そうだとすれば、寿命は1年ということになる。ずいぶん成長が早いが、貝とはそんなものなのだろうか。

 ただ、貝と言われても、お鮨屋で見かけるのは、湯引き処理済みの、黒っぽい不思議な形の剥き身だ。そのため、なんとなく工業製品的な感じもする。
 小生は、一度も注文したことはないが、セット品に入っていたりするのでどうしても食べることになる。感激するような食材とは思えないが、重要なネタとして扱われているようだ。

 そこで、昔はどんな扱いだっのか見てみたら、トリガイ(鳥蛤)は“最も下品にして賤民の食と爲す。”(2)だと。

〜鳥貝と鶏肉〜
100g当たり 鳥貝 ササミ
ゆで
エネルギー Kcal 86 125
水分 g 78.6 70.6
蛋白質 g 12.9 27.3
脂質 g 0.3 1.0
 さらに、驚くことに、猫が“腸を食へば、則ち耳脱け落つ。”と記載されているではないか。風評源はわからぬが、名前が悪いので悪態をつかれている感じがしないでもない。
 斧足部分が、嘴をもった鳥のように見えるのは確かだが、それを名称ににする必要はなかった筈である。(3)
 仏教に帰依しているにもかかわらず、鳥肉代替品イメージを与えるのはいかにもまずい。嫌がられて当然ではないか。
 実際、鶏肉に似ているから、その通りではあるのだが、それがかえって問題を大きくしている。もちろん、勝手な推測にすぎないが。

 そう言えば、トリガイの脚だが、筋肉質でなかなかのものらしい。もちろん、立って歩く訳はないが、“ヒトデなどが近寄ってくると、この長い足を利用してぴょんと飛びはねて逃れる”(4)というから、たいしたものだ。
 その位締まっている肉だから、食べれば美味しいということか。

 --- 参照 ---
(1) 【魚市場歳時記】トリガイ 朝日新聞 [2007年4月5日]
  http://mytown.asahi.com/aichi/news.php?k_id=24000320704050001
(2) 和漢三才圖會 Yabtyan 書き下し及び注記
  http://homepage2.nifty.com/onibi/wakan47.html
(3) ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 トリガイ
  http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/zarugai/torigai.html
(4) 香川の魚 トリガイ  http://www.pref.kagawa.jp/suisan/html/suisan/kagawanosakana/torigai/torigai.htm
(食品成分データベース) JSTA  http://fooddb.jp/search.html (俳句の出典) [俳句会−むつみ句会5] http://www16.ocn.ne.jp/~m623/4tousi.htm (鮨のイラスト) (C) Hitoshi Nomura NOM's FOODS iLLUSTRATED http://homepage1.nifty.com/NOM/


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