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魚の話  2008年8月1日
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すながにの話…



  潮引きて 筋を残せる 砂の上
   爪かまへつゝ 蟹ひとつ這ふ
     (作者: 山広正晴)
 
    砂蟹は見失う位早く動くから、他の種類かも.


 夏の醍醐味は、海辺で遊ぶこと。ただ炎天下で活発に動く気にはなれないから、砂浜で寝ていることが多いのが実情だが。
 と言うことで、どう遊ぶか考えるために、“海辺をまるごと楽しもう!”とのサブタイトルがついているカラー写真本(1)を眺めてみた。この本、よくある小図鑑とは違い、○○科といった分類で整理されていない。写真に合わせて、見かける場所と特徴が簡単に書いてあるだけ。しかも、食用かも記載されていない。時代に合わせて作った感じがする。

 そう思いながら見ていて気付いたのだが、鋏の大きさが左右で異なる“潮招(望潮)”君が漏れている。
 昔は、クローズアップ写真が必ず載っていた位の人気者だったと思うが、無いのだ。忘れられてしまうことなど有り得ないから、今では滅多にお目にかかれないということだろう。干潟の生き物だから、致し方ないかも。
 “潮招”君の隣組、砂浜に住む“砂蟹”君はどうなっているか心配だったが、掲載されていたので一安心。もっとも、砂地の方が泥地よりは残っていると言っても、シーズンを外れると、ゴミが放置されたり、改良工事が入ったりするから住みにくいことこのうえなかろう。細々ながらも生き延びているのが奇跡かも。
 最近は人工砂浜化している所も多いが、この蟹君の場合、昼間は自分で掘った深い穴のなかにいるとされているようだから、無視されていなければよいが。

 ところで、この手の蟹の生活リズムは、昼/夜ではなく、満潮/干潮ではないか。
 そう思うのは、以前、南の島で、砂地に寝ころんで、なにげなく蟹穴を眺めていたら、突然、穴から出てきたからだ。ただ、よく見ようと少しでも体を動かすと、すぐに察知して引っ込んでしまう。だいぶ出てきたところで、追いかけても、すばしこくて、とてもかなわない。
 それに、一旦引っ込むと、1時間近く出てこないようだ。我慢強く待つ人でなければ、お相手はとうてい無理である。

 そんなこともあるのか、“砂蟹”君にどうしてもご挨拶したい人は、時間をかけて穴を掘りおこすらしい。深いので大仕事だ。
 ヒトにしてみれば、顔を確認して喜ぶという、実にたわいのない遊びだが、“砂蟹”君にとっては迷惑千万。と言うより、恐怖で心臓が止まりそうかも。

 そんな面倒な一匹狼と遊ぶより、迫力あるビデオ映像をとりたいという人もいるようで、最近は群生する小さな蟹君に人気が集まっているとか。一斉に動くところを狙うらしい。小生は写すより、映像を見せてもらう方が好きだから、興味はないが。
 本によれば、干潟には、コバルトブルーの群生蟹もいるらしい。いかに美しくても、干潟でシートを敷いてゴロ寝している訳にはいかないだろうから、見にいく気はしないが。

 まあ、“砂蟹”君を眺めているのも面白いが、浜の遊びと言えば、童心にかえって、蟹君との追いかけゴッコではないか。広い浜でなければ、子供でも捕まえることができる種類も見かける筈だ。
 小学生の頃、捕まえた蟹を持ち帰り、シラス干しで飼った覚えがあるが、最近の子供達はどうしているのだろう。
 絶滅危惧種も多いから、採取はよせと言われているなら、可愛そうなことだ。

 当時の蟹はどれだろうと写真を見ていて、ふと思ったのだが、どうせ飼うなら、“赤手蟹”か“弁慶蟹”が面白そうだ。浜から遠征してきて、土手や、石垣をのんびり歩いていたりする輩だ。この手の挑戦好きは、喧嘩好きだが、仲良くなりやすいのでは。飼い主になつく可能性もあるかも。
 そういえば、砂浜で見かける蟹は普通は食べないものだが、この赤い色の蟹だけは別と、どこかで聞いた覚えがある。昔のことだから、当てにはならぬが。
 食べると弁慶の力がもらえる話があるとも思えないから、朝、たまたま庭にやってきたのを、これ幸とばかり捕まえて、味噌汁に入れるということかも。
 おっと、ペットにしたら、食べる訳にはいかないか。

 --- 参照 ---
(1) 阿部正之: 「海辺をまるごと楽しもう! 海辺の生物観察図鑑」 誠文堂新光社 2008年5月
(和歌の出典) 小田原利光: 「蟹に関する和歌, 俳句及び古川柳について」日本甲殻類学会誌CANCER 1 33-39 (1991)
  http://nels.nii.ac.jp/els/110002950353.pdf?id=ART0003305326&type=pdf&lang=jp&host
  =cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1211945805&cp=
(カニのイラスト) (C) Oekaki Kobo “おえかき工房” http://www.ne.jp/asahi/paint-shop/oekaki.co/index.html


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