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魚の話 2009年3月13日 |
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ほら貝の話…ほら貝の 響きが冴える 蒼き海 朝日が眩しい。そこに、突如として、ホラ貝の音。 これで、ローマの噴水に、海神が甦る。(1) 法螺貝といえば、山伏の持ち物か、合戦の号令ラッパとのイメージが強いが、もっと古い時代には、極めて重要な呪術用具だったようである。 千手観音が手に持っているし、東大寺修二会(お水取り)でも吹き鳴らされるからだ。 おそらく、修験者にとっては獣避けとしても必要だったと思われるし、戦乱の世に使われたのは、武士が、宗教勢力が後盾となっていることを示したかったからではないか。特に、僧兵との戦いでは、顕著な効果があったろう。 所有すること自体が、権威そのものであり、いくつもの音が響けばそれだけで大勢力であることを誇示できた筈。なにせ、ホラ貝は、紀伊半島以南に生息とされているが、大きなものは珊瑚礁の海にしかいないのだ。大きな音が出る貝は、超高価な輸入品しかありえず、まさに“宝”螺貝なのである。 さらに時代を遡れば、その起源はヒンドゥー教神話の“Paanchajanya”に行き着く。(2)太陽神Vishnuの化身、Krishnaが退治した海の悪魔の残骸が貝となったとされる。従って、法螺貝を吹けば悪魔が驚いて退散するのだ。 この信仰が、仏教と習合して伝来してきたということだろう。 ただ、インドの宗教は大陸的だろうから、そもそもの原点は、南洋の海人のアニミズムだと思われる。ポリネシア辺りの感覚かも。 それにしても、大きな音を出せることに気付いた知恵は、たいしたものである。(3) その知恵は、インドだけでなく、ギリシアにまで伝わったのだから、古代人の力おそるべし。 ギリシア神話では、海神ポセイドンの息子、半魚人トリトンが荒れる海を鎮めるために、ホラ貝を吹き鳴らすのである。 もっとも、現代になってから、そんなホラ貝信仰の感覚は消え失せたようである。今や、ホラ貝と言えば、沖縄の海鮮料理屋の飾りモノ。どこにでもあると言ったら言い過ぎか。 --- 参照 --- (1) レスピーギの「ローマの噴水」第2部“朝のトリトンの噴水” (2) “Why a conch shell is sacred?”India Heritage NEWSLETTER [March 2006] http://www.indiaheritage.org/newlet/march06.htm (3) 柘植元一: 「貝の楽器−法螺 法螺貝を利用してラッパを作りだしたのは、驚くべき知恵といわねばならない。」 DAGIAN 2002年1月 http://www2.cosmo-oil.co.jp/dagian/41/19.html (Fontana del Tritone[Roma Barberini]の写真) [Wikipedia] http://it.wikipedia.org/wiki/File:RomaBerniniFontanaTritone.JPG 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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