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魚の話  2009年8月7日+追記[8月23日]
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やこう貝の話…


 東京の 夏の栄螺は 口ばかり 口重なのは ヤクゲー君か
    ヤコウガイは珊瑚礁の深い穴に棲むという。
←小さい時の話: 追記参照
     沖縄ではヤクゲーと呼ばれているそうだ。(1)

 夜光貝は、磨くと、月明かりでも光るということで名付けられたのかと思ったら、もともとは屋久貝だったとか。
 まあ、沖縄では観光料理に刺身として登場するが、大型サザエといったところ。“大きさが20cm、重さが3Kgを超える”(2)そうだ。そうなると、蓋は文鎮並みだ。
 関東にも、種子島産等が入荷したりするらしい。(3)

 巨大サザエでしかないから、そのままでは美しさは皆無。しかし、注意深く、殻の表面を磨いて、エナメル層に到達すると、美しい螺旋が燦燦と輝く。(4)

 そうなれば、月光に映える酒杯として使える。
 そんな杯で酌み交わす酒宴は、大いに盛り上がったに違いない。
 「公卿、殿上人、かはりがはり盃とりて、はてには屋久貝といふものして飲みて立つ」(枕草子142段)そうだ。

 現代で言えば、“屋久”ブランドの高級カットガラスのような扱いでは。どうしても、“屋久”だという人だらけだったようである。
 そう思うのは、正倉院御物として有名な「楓蘇芳染螺鈿槽琵琶」の螺鈿は、ヤコウガイだけでなく、アワビも併用されているから。両者の差は顕著でないという。(5)
 実態は、平城京の職人達が、アワビが薄すぎて使えなかったということらしいが、都の人々が、この貝に心底惚れ込んでいたのは間違いない。

 --- 追記 ---
【山口正士 先生のご指摘[2009年8月22日]のポイント】
・生態について [山口先生は人工採卵・稚貝飼育に成功。世界初。]
  -小さい時は、岩穴に隠れる。
  -大きくなると、岩盤の表面に棲む。
  -周囲の岩と同じような藻類が殻に付着し、背景と一体化する。
・沖縄には、螺鈿用に真珠層を薄く剥離する伝統技術が継承されていた。
  -沖縄県立博物館が螺鈿細工の工芸品を所蔵。
・「ヤクゲー」の由来は、屋久島[地名]ではなさそうだ。
  -屋久島は沖縄の北方で、薩摩。
  -屋久島・種子島は分布の北限で、主産地は南。
  -“ヤク”は屋久島を意味しないとの見方がある。
・インドネシアでは「白い目」と呼ばれている。
  -海の中で岩からはがすと“へた”[蓋の部分]が真っ白で丸く見える。

 --- 参照 ---
(1) 「ヤコウガイ-沖縄コンパクト辞典」琉球新報 [2003年3月1日]
     http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-43210-storytopic-121.html
(2) 山川(矢敷)彩子: 「サンゴ礁の巨大巻貝 ヤコウガイ」 沖縄リーフチェック研究会 [2008.2.15]
  http://reefcheck.net/2008/02/15/topic22/
(3) 「ヤコウガイ」 ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑
  http://www.zukan-bouz.com/makigai/kofukusoku/sazae/yakougai.html
(4) 「アワビワークス貝辞典 Great green turban」有限会社 ホッツ アワビワークス事業部
  http://awabiworks.com/dictionary/dictionary.html
(5) 木下尚子: 「正倉院伝来の貝製品と貝殻―ヤコウガイを中心に―」正倉院紀要31号
  http://shosoin.kunaicho.go.jp/public/pdf/0000000256.pdf
(枕草子) 国語の先生の為のテキストファイル集・古文編
  http://homepage2.nifty.com/zaco/text/ko/makura3.txt
(螺鈿アイコン) (C) Marry's Textiles http://marrytex.com/
 


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