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魚の話  2014年10月17日

ぎんざめの話

 鱶海で 静かに暮らして 3億年
  おとぼけ顔が 好かれた訳か

 怪魚だ まさにキメラと 大騒ぎ
  この先珍で 生き延びれるか


ホメーロス/Homerの「イーリアス/Iliad」によれば、Chimæraとは、頭部はライオン、胴は山羊、尾は蛇で、口から火を吹く怪物。
銀鮫こそ、このChimaeraと見なされているという。まあ、見かけは鮫とは程遠い。
深海魚で昔は滅多に見ることはなかったろうから、姿を見てビックリして、怪魚とされたのだろう。

尾が蛇様とは思えないが、尾鰭は無いし、先細りだから魚としてはかなり異質。
その一方で、胸鰭は極めて大きく、矢鱈に目立つ。背鰭も一応はついている。
鮫同様に、浮き袋は無いのだろうから、のんびり徘徊するのに合った体つきと見てよさそう。
もっとも、拝見に参上した時は静かにしていたが。底鮫と同じで、普段は目立たぬようにという生活信条か。

ここまでの容姿なら、どうというほどのことはない。
なんといっても異様感を与えるのは顔。
鮫類の顔つきとは全く違う。
先ず、鮫のように鰓孔が並んではいない。鰓蓋ではないらしいが、その辺りの外観は一般の魚に似ている。
口の位置が先端ではなく、頭部の下という点では鮫と同じだが、獰猛な鮫のように裂けるほど大きく開くことはなさそう。
こう書くと、一般の魚と鮫の合いの子的な顔に近そうと解釈しがちだが、実際には全く違うのである。顔形はさっぱり魚臭くないのだ。表皮に裂け目というか傷跡のような溝があることも、その印象を強めているのかも。
その顔をライオン似と言う人がいたのだろうが、小生にはそうは見えない。と言って、他に形容する相手も無さそうだから、そんなものかもという感じ。しいてあげれば、ウリ坊かナ。ともあれ、なんとはなしだが、哺乳類的な顔にたとえたくなる。おそらく、目が大きいせいである。と言うと、深海魚だから、金目鯛形と想像しがちだが、印象的には全くそれとは似ていない。哺乳類的な感じがして、目線を感じてしまうのである。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑によれば、底曳網にかかる魚だそうだから、漁業関係者にとっては決して珍しい訳ではなさそうだ。ただ、市場には出回らないらしい。白身なので、練り製品の材料に使われているとのこと。そうとは知らずに食べていることもありそう。全体のほんの一部でしかないとはいえ。
まとまって獲れないから関心が薄いだけで、本来は鮫より重宝されてしかるべき種類なのかも。個人差があるからそのまま信じる訳にはいかぬが、身は美味との評価だから。絶品でなくて幸である。
そんな話を聞かされると、食材としては無視されていると思いきや、そうとも限らないようである。水産総合研究センターの情報によれば、ニュージーランドではトロール漁であがったギンザメ類は立派な食材として通用しているという。
沢山棲息しているようには思えないから、トロールで根こそぎ獲られて絶滅させられなければよいが。

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