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海胆の話  2017年9月10日

がんがぜ の話

 怖くない ガンガゼ挟み 棘カット
     トングとチョキは石鯛釣りの必需品。

ガゼ[(石)隠子 or 甲贏]とは海胆の古称らしい。[@「日本国語大辞典」]
的屋ジャーゴンの"人騒がせ"のガセとは無縁どころか、古代公家用語だった可能性も。そんな用語が数々残っている東北では、ガゼ海胆という言い方で、今も使われているからだ。板海胆ではなく、殻のママの馬糞海胆を指す言葉である。

ただ、一般にはガゼという名称は岩ガゼに残るだけ。誰も採ろうとはしない嫌われモノ。

おそらく、食べる部分が少ない割に、肝を出す手間が尋常ではないから、ほったらかしなのだと思う。
そんなこともあって、"アッ、居たゾ!"と言う位、勢揃いしている場所もあるそうだ。すぐに見つかるが、手が届くほど近くはない所にいるので、漁民に袋叩きにされず、ノウノウと生きているのだと拝察つかまつり候。
もっとも、ガンガゼ漁が無い訳でもない。ヒト様御用達ではなく、石鯛君に食べて頂くのである。
 岩隠子[ガンガゼ]/刺冠海膽/Black long spine urchin

ご存知のように、この種は、細かい針がびっしりと生えており、下手に触れたるとすぐに刺さる。
経験すればわかるが、刺さったら引き抜けばよいという単純な理屈が通用しない、実に厄介な輩なのだ。針は脆く、すぐに折れてしまうので、どうしても皮膚に残ってしまう。(抜けないように細かな逆棘があるのだろう。)そのママでしょうがないかという訳にいかないのは御承知の通り。毒があり、紫色に腫れあがってくるのだ。
もちろん、その痛みたるや、耐え難いものがあるらしい。
頑丈な防衛より、手を出すとえらい目にあうゾという、針鼠的な姿勢を採用している訳だ。おそらく、殻も体躯を支えるだけの薄いものにしている筈だ。だからこそ、砂浜での殻拾いの対象にはならないのである。時に針付き欠片があるものの。

日本にも色々な類縁種がるが、世界に広げればかなり多様なのではなかろうか。
 大西洋岩隠子…食用かも。
 乙女隠子/堅棘海膽
 赤鬼隠子/輻星肛海膽…棘の根元に光った青い点々が一列に並ぶ。
 竜宮隠子
 隠子擬 徳利隠子擬/環刺棘海膽/Stripe spined urchin
 蜘蛛隠子科
 笠足隠子

これらの《岩隠子》類の外見とはかなり異なるが、近しい親戚と見なされている2つのグループ、《乙女隠子 or 乙女海胆》《袋海胆 or 柔海胆》があるので、それにも触れておこう。

  《乙女隠子 or 乙女海胆》
名称から見て、もともとはガゼ系と見られていなかったということではないか。
情報が少ない割には名前は小生も耳にしたことがある位だから、もっぱら水族館深海展示室の水槽棲の種だと思う。おそらく、底引き網にたまにかかる類。
 乙女隠子/堅海胆
まだまだ希少種がいそうだが、簡単に捜せるものではないし、たとえ底網にかかっても、それが珍種と気付く人は滅多にいまい。

  《袋海胆 or 柔海胆》
平たくてブヨブヨした袋のような体。全体的に膨張させたり収縮できるらしい。その目的についての解説が見当たらないので、どういうことかわからないが、硬い殻ではなく、皮革的構造であるかの如き解説もある。(皮革を持つ訳がないから、鱗状の殻が甍のように重なりあっていると考えるのが自然だ。)このグループは毒腺様組織があるという記載も見かける。"Fire!"という手の痛みだから相当なモノと見てよいのではなかろうか。
深海(本来は100m程度か?)泥砂海棲みが多いようだ。
 袋海胆/柔海膽/Fire urchin
 琉球袋海胆
 オーストラリア袋海胆…大型(15cm径)
 姫袋海胆…小型(5cm径)
 飯島袋海胆…例外的に浅海岩礁棲(毒棘)
ただ、いかにも深海らしき感が漂うのは、生きている実物を見たからと言う訳でもない。以下のような命名を知ったから。
 閻魔袋海胆
 ナマハゲ袋海胆
異端であるが、敵が少ないようにも思えるから、棲み分けしちるから、異種・変種的な多様性を持っていそうな気がする。

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