表紙 目次 | 魚の話 2017年11月5日 やなぎはぜ の話水ひろしなにをくよくよ 見てござる ニッチ生活者は 流れに逆らわず淡々と生きるのみ。 海水〜汽水〜淡水魚をうろうろしているらしく、付けられた名称からすれば正統派の鯊と思ってしまうが、その姿を眺めれば、普段考えているハゼのイメージとは、かけ離れているタイプをとりあげよう。 先ずは、 砂鯊。 ダーツ型の細身だから、Sand Darts群に属するような命名は極めて自然だが、ダーツ型類から外されている。 素人的には、どの辺りが違うかといえば、遊泳などおよそ興味が無く、砂潜りが得意という点。 ママで名称をつけられてしまった訳だ。もちろん体の形がカレイのような扁平型ではないから砂かぶり的に砂のなかに入る訳ではない。 自分で穴を掘って、体半分海底から露出させた状態で生きているようだ。(穴掘りならワラスボもいるから、珍しくもない訳だが。) 砂底に一匹ずつ隠れていて、見た目には単なる砂底なのに、突然次々と頭を出してくるチンアナゴ的な生態である。そんな体勢でも、プランクトンを食べて生きていけるのだからたいしたもの。それなりの条件が揃った環境でないと無理臭いが。常識的には、陽が差し込み藻が生えている砂底ということか。穴掘りが簡単とも思えないし、エビ君と同居の手を使っている訳でもないから、砂質を選ぶ必要があろう。従って、見かけよりずっとニッチ的に生きている種だと思われる。 それでも、昔は、そのような場所はそこここにあったろうが、今は滅多にお目にかからぬ。一大試練に直面しているのは間違いなかろう。 いかにもハゼ的な生き方。 自分好みの居住環境に滅茶苦茶拘る訳である。 それぞれが、ひたすらニッチを狙って生き抜くのである。これが、急速進化の決め手だと思う。 その結果、ハゼ全体では、細かな棲み分けが進み、膨大な種類が生まれた。ニッチが成り立たなくなり絶滅してしまった種も少なくないのは間違いなさそう。 もう一種は、タイトルにもってきた、 柳鯊。 群れてフラフラしているので裏側から見た柳葉的と見られた訳だ。動物の水中挙動での比喩なら、のたりくたりのボウフラ/リグラー[wriggler]。そのような性格の持主かもしれない。 柳にしても、ボウフラにしても、この魚の本質を言い表したなかなかで出来栄え。ハゼの仲間のなかで、骨が一番退化している部類だからだ。古代の風合いを残した上に、骨をできる限り残してきたタイプとは対照的。こちらも、古い時代の面影を宿している魚といえよう。 と言うことで、ハゼ類を俯瞰的に眺めるとこういうことになる。・・・ ┌─【ハゼの古流】無吸盤(左右胸鰭分離型)の淡水棲息系[Sleeper] │ ┤ ├─【ハゼの現行主流】 │ │ 【擬似ハゼ】 │ ├─幼魚体型類[Infantfish] │ │┌ダーツ体型類[dartfish] ├┤ │└蠕虫体型類[wormfish] │ ├─チンアナゴ的[半身砂穴露出]体質類 │ └─リグラー[ぼうふら/wriggler]的体質類 砂鯊と柳鯊を、全体に入れ込むと、こんな感じになる。(素人作成なので、間違いが多いことを前提に眺めて頂きたく。)・・・ ┌[Rhyacichthyidae]・・・古代的様相 ツバサハゼ類 ├[Odontobutidae] ドンコ類 ├[Eleotridae] カワアナゴ類 │ │↑無吸盤(左右胸鰭分離型)の淡水棲息系 ┤ ├[Gobiidae]【ハゼの主流】 │ 《Amblyopinae》・・・藁素坊、等が所属 │ 《Gobiinae》・・・鬚鯊、等が所属 │ 《Gobionellinae》・・・真鯊、等が所属 │ 《Oxudercinae》・・・跳鯊、等が所属 │ 《Sicydiinae》坊主鯊、等が所属 │ │↓擬似ハゼ ├[Schindleriidae]幼魚体型類 ├[Ptereleotridae]ダーツ体型類 ├[Microdesmidae]蠕虫[wormfish]体型類 ├[Kraemeriidaechinn]チンアナゴ的体質類 └[Xenisthmidaeリグラー[wriggler]的体質類 ┼ ○Xenisthmusヤナギハゼ類 ┼ 柳鯊/峽塘鱧/Clear wriggler(clarus)◆ ┼ 紋柳鯊/多紋峽塘鱧/Bull's-eye wriggler(polyzonatus) ┼ -/頭帶峽塘鱧/Flathead wriggler or African wriggler(africanus) ┼ -/斑峽塘鱧/Freckled wriggler(balius) ┼ -/-/Chi wriggler(chi) ┼ -/-/Spotted wriggler(eirospilus) ┼ -/-/Halfbelt wriggler(smithi) ┼ -(semicinctus) ┼ ○Allomicrodesmusアルロミクロデスムス類 ┼ -/異蠕鱧/Dorothea’s wriggler(dorotheae ) ┼ ○Gymnoxenisthmusギムノキセニストムス類 ┼ -(tigrellus)@紅海 ┼ ○Paraxenisthmusパラキセニストムス類 ┼ -(springeri) ┼ ○Rotumaロトゥマ類 ┼ -/大眼路島峽塘鱧/Lewis’s Wriggler(lewisi) ┼ ○Tysonティソン類 ┼ -/泰森峽塘鱧/Tyson's wriggler or arrow wriggler(belos) (分類参照) JODC(日本海洋データセンター)GODAC/JAMSTEC 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |