トップ頁へ>>>
魚の話  2013年2月3日
「魚」の目次へ>>>
 


ヤリヌメリの話…


メゴチといえば天麩羅である。この名前は俗称で、正式にはネズミゴチ。釣り人はネズッポと呼ぶが。 キス釣りの外道だが、淡白で上品なキスより、新鮮なら、いかにも魚の身らしい食感を味わえるから、メゴチの方が魅力的かも。まあ、こればかりは好き好き。

名前が混乱している魚で、れっきとしたコチの系統の魚はメゴチでなくマゴチ。もっとも、メゴチという正式名称を持つ種もいるが、まあ常識的には普通に食べる種がメゴチである。
その通称メゴチにも2種類があることを、新刊本で知った。
どうも、普通食するメゴチはネズミゴチだけではないらしいのだ。三浦半島辺りだと、メインはトビヌメリらしい。他にも、トビヌメリやセトヌメリといった種も市場に入ってくるようなのだ。と言って、どう違うかはよくわからぬが。普通、絶品と思って食べているのは、トビヌメリなのだろうか。

ところがである。
よく似ているが、これらのネズッポ連中とは違う輩が、時として混ざってくるらしい。ヨメゴチ属のヤリヌメリという魚。頭部の棘 (前鰓蓋骨棘) の形状が違う程度でしかない。
逗子辺りで獲ると、1割くらい入っていたりするし、そいつが多くなるスポットもあるようで、そうなると3割とか。で、この程度の違いで、どうして気になるかといえば、こやつだけはえらく臭いのだという。もちろん食べる人は滅多にいない。他の魚と一緒にしておくと、臭気が移ったりするので、普通は即座に捨てるものらしい。従って、普通はその存在に気付かない訳だ。
言うまでもないが、釣り人は、即リリースである。熟達者だと、頭を見ているだけで悪臭を感じるらしいから、吊り上げられると分泌物をドカッと放出する魚なのだろう。

ところがである。酔狂にも、この魚を食べてみる人もいるらしい。まあ、一寸位の臭みなら、せっかく釣ったんだから食べるかとなるのは、確かにわかる。
しかし、食べるといがらっぽいさを覚えるそうだ。場合によっては、舌にピリピリとした刺激感を覚えたり。所謂、辛味だが、この手のものは本能的にすぐに吐き出すものだが、そこをこらえて食べる人もいるのだろう。結果、食中毒発生となったことがあるようだ。もちろん、極めて稀な事象である。
しかし、毒を扱う学者の方々にとってみれば、おそらく、興味津々。早速、分離同定に挑戦したという。

単離され、どのような毒なのか判明するところまではいかなかったようだが、「毒」であることははっきりした模様。
マウスが1分間七転八倒し、バッタリと横になって1時間というのだから、結構、強烈。しかし、90分経過すると自然に回復したというのだ。
世の中、色々な毒があるものだとつくづく感心した。

(本) 塩見一雄,長島裕二:「新・海洋動物の毒―フグからイソギンチャクまで」 成山堂書店 2013.1.18
(ウエブリソーシス) ヤリヌメリ http://www15.ocn.ne.jp/~pingisu/zukan/umi/yarinumeri/yarinumeri.htm
(当サイト過去記載) ねずみごちの話[2007.1.26]


 「魚」の目次へ>>>    トップ頁へ>>>
 
    (C) 2013 RandDManagement.com