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水母の話  2018年2月25日

ばれんくらげ の話


 纏こそ
 喧嘩で競う
 海の華


"ばれん水母"は、体長は約4〜5cmで、暖かい海では珍しくもない浮遊性種。
バレンと言えば、版画用の道具と考えてしまうが、ここでは全く違う。火事と喧嘩で有名な江戸の火消しが持っていた華やかな纏[まとい]の周囲に垂れ下がる「馬簾」のコト。現代では、ほとんど死語。
  馬簾水母

生物のテキストには、珊瑚は礁を形成するが動物との説明がなされ、その一生の遍歴図が登場してくる。それで一応は納得する訳だ。ところが、馬簾水母タイプの生物については習った覚えがない。軽視されていると見てよさそう。
極めて示唆に富む構造なのに。

ということで、とりあげてみた。

なにが凄いかといえば、その構造。
簡単(感嘆)にご紹介しておこう。

形の特徴は言うまでもなく、「馬簾」ということになるが、全体構造からいえば、装飾がついたゴムホースのように映る。進行方向の半分が運動部で、後方の半分は生命を司る代謝部になっている。(このような用語は用いられていないのでご注意のほど。)
→[Video]奇妙な生物 バレンクラゲ Physophora hydrostatica
  by RENDIVE@YouTube 2011/01/22

先ず、前半部だが、
突端には浮力を発揮し、身体全体の先頭になるための【気胞体】。
それに続いて、推進力を生むための、数個の【泳鐘】が2列に並ぶ。オール的板を目指したいところだが、いかんせん鐘状という条件から逃れることはできなかったようだ。空洞内の水を押し出すだけでは翅や鱗のような推進力は望むべくもないが、流れに身をまかせながらの姿勢制御や海中での上昇という目的に限れば、十分な機能を持っていることになろう。

後半部の方には、
規則正しく並ぶ色つきの環と言うか、円筒状の盲管があり、その名称は【感触体】。類縁種でも、棘とは違うが外部にとび出ている部分が目立つから、防衛的な意味がありそう。
もちろん、防衛だけでは生活できないから、攻撃機能は必須である。それが、餌をとらえる指状の【触手】。
当然ながら、クラゲ一族としてのアイデンティティとして、その表面には刺胞細胞が組み込まれている。触手を撮影した写真では赤い点として写っているものがソレだろう。
そして、触手の傍らには、餌を取り入れて消化する【栄養体】が。
これだけでは、生物機能としては不完全。なんと言っても重要なのが、生命体として欠くことのできぬ、♂♀【生殖体】。

不可欠な機能に対して、それぞれ専門器官が形作られていることがわかる。

このように見ていくだけだと、フ〜ンで終わってしまう。

重要なのは、珊瑚と皮革しながら眺めること。・・・
珊瑚は、同じ形の生物が群生している訳だが、実は、「馬簾水母」も同じように群生体なのである。
上記で言えば、珊瑚の1個体とよく似ているのは胃腔体に特化した【栄養体】。残りは、夫々が専門の役割を発揮すべく変身していることになる。
つまり、無機質の堅い殻を造って群生するのではなく、"幹"を造って全員がその場所に応じて専門特化することで群生していることになる。
群生という視点で眺めれば、浮遊する珊瑚類と言うことになろうか。
このボディプランでの進化の極みとしたい。

【刺胞動物/Cnidaria
花虫/Anthozoa…ポリプ型(珊瑚, 磯巾着)

Jellyfish/Medusozoa
  ヒドロ虫/Hydrozoa
   【Leptolinae系】
      《有頭 Capitata》…ヒドラ (Hydra)本流
     管水母Siphonophora
      -Physophoridae
       ○Physophora…バレンクラゲ類
        馬簾水母(hydrostatica)
        馬簾水母擬(gilmeri)

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